夜明け3秒前
「いや、あれはどう考えてもナンパだっただろ。あの人酔ってたし」

「ええ?そんなことないと思うけど……」


ただ道がわからなくて困っている人だったと思うけどなあ……
でも、結局その人のことは流川くんが案内してくれて助かった。


私じゃどうしても人見知りをしてしまって、相手の人に伝わりづらいこともあると思うから。


そうして話しているとあっという間に泊まる部屋に着いた。
カードキーを出して、このあとはお風呂に入ってゆっくりしようなんて考える。


「ねえ凛月」


くいっと手を引っ張れて驚く。


「一緒の部屋で寝る?」
「えっ……え!?」


ここがホテルの廊下だということも忘れて大きな声が出てしまった。
だって、だって流川くんがそんなこといきなり言うから……!


彼が触れている手の部分から顔まで全部熱い。
静かな空間で、自分の心臓だけがうるさくて。


一緒って……同じベッドで寝るってこと、だよね……!?
それってこの前みたい、に。


一緒のベッドで起きたあの日のことを思い出す。
すごく近かった距離、体温まで勝手に考え始めてしまって頭から湯気が出てしまいそう。


まだ自覚する少し前ですらあんなにドキドキしたのに。
無理、絶対に無理だ……!


どう答えたらいいのか必死に悩んでいると、頭上から笑い声が降ってきた。
< 165 / 192 >

この作品をシェア

pagetop