夜明け3秒前
「あれ、流川くん……?」


どうしてここに……?
こんなに遅い時間だからもう寝ているかと思った。


彼は私と同じように驚いた表情をしていたけれど、駆け足気味でこっちへと来る。


「何かあった?ていうか、ホテルの中とは言えこんな時間に一人は危ないだろ」


流川くんは珍しく怒っているようだった。
眉間にしわがよってる……あんまり見ない表情だ。


「ごめんね、なんだか眠れなくて。心配してくれてありがとう」


私のことを想って怒ってくれる人なんてそうそういない。
不謹慎だけれど嬉しくて、えへへと笑うと彼は小さく息を吐いた。


「まあ無事ならいいんだけどさ」

「流川くんは優しいね。ところで、流川くんこそ何かあったの?」

「俺は……凛月と一緒だよ。眠れないから飲み物でも買おうと思って」


質問に答えてくれながら、私の隣にそっと座る。

そっか。
確かこの近くに自動販売機があったっけ。


「何か買った?」

「ううん、まだ。でももういいや。凛月と話してる方が気分転換になるし」

「そ、そっか」


また心臓がドキドキし始める。
彼が「うん」と微笑んだあと少し沈黙が流れて、潮風が吹いた。
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