夜明け3秒前
「あっという間だったな。もう学校始まんのかー」

「ふふ、コテージでは朝ゆっくりだったし、早起きするの大変かも」


昼夜逆転の生活をしていたわけではないけれど、やっぱり学校が始まると思うと少し気が重い。
今までと違ってよく眠れるようになったし、アラームかけるようにしないと。


「……学校が始まっても、流川くんと一緒にいられる、かな」


この旅が終わって、いつもの日常が始まっても。
ほとんど無意識にぽつりと呟くと、彼の優しい声が耳に届いた。


「当たり前だろ。ちょっと校舎は離れてるけど、いつでも会いに行くよ」


嬉しい言葉が返ってきて彼の方を見ると、大丈夫だよと言うかのように微笑まれた。


「……うん、ありがとう」


学校が始まったら、流川くんは人気者で、私はクラスで嫌われている人間に戻る。
思えば、彼と初めて会った日が懐かしい。


あのとき助けてくれていなかったら今の私はいないんだと思うと、運命のめぐり合わせってすごいなって本当に思う。
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