夜明け3秒前
7.朝ぼらけ
家に帰るときはいつも緊張していたと思う。
今日はどうなるだろう、母の機嫌は悪くないか、また叩かれるんじゃないかって考えて。


でも今日はいつも以上に緊張していた。
だけど、そういうネガティブな気持ちじゃない。


逃げるんじゃなくて、ちゃんと家族と向き合えるように。
すーはー……と大きく深呼吸してから、玄関の扉を開けて入る。


「ただいまー!」


絶対に聞こえる声量で挨拶をする。
だけど、それ以上に大きな声が奥から聞こえてきてかき消されてしまった。


え、な、なんかあったのかな……
勇気を出した初日からこれなの……?


もうすでに心が折れそうになっていると、足元に知らない靴が二足並んでいることに気がついた。


誰かが家に来てる……?
でも部屋からは楽しそうな声じゃなく、切羽詰まったような声が聞こえた気がするけれど……


ここにいても仕方がない。
よし、と気合を入れて部屋の扉を開ける。

と、そこには想像もしていなかった景色が広がっていた。

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