夜明け3秒前
引き取るってそういうことなの……
本当に私を迎えに来たの……?


驚きすぎて、考えなくちゃいけないのに何も考えられない。
だってまさか、こんなことが起きるなんて思ってなくて。


「凛月。もし来たいなら大歓迎よ、遠慮なんてしなくていいの。それにね、断っても凛月を責めたりしないし、無理やり連れていったりしないわ。貴女の意見を尊重するから、素直な気持ちを聞かせてくれる?」


重苦しい空気に、祖母の優しくて温かい声が響く。
この意見をしやすい言い方は、流川くんと似ている気がする。


どうしよう……
どうしたらいい?


家族と向き合うと決めて帰って来たのに。
私も清さんのところで体験したような、あの幸せな空間をいつか実現できるようにって思っていたのに。


無理、じゃない。
私は、お母さんたちに酷いことをされたけれど、嫌いになれたわけじゃない。


ずっと愛されたくて。
兄妹たちにそうしているように、私もそうされたいってだけで。


離れたくない。
まだ諦めたくない。


「……だいじょ――」

大丈夫。
いつものようにそう言いかけて、やめた。
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