夜明け3秒前
それからしばらくたって、13時30分頃。
ご飯を食べ終わって「ごちそうさまでした」と手を合わせる。


「これからどうする?帰らなきゃやばい?」

「ううん、今日は許可をもらったから大丈夫。麻妃さえよければ服選びについてきてほしいんだけど……ダメかな?」


レジでお金を払って、お店を出る。
エアコンの効いていた部屋にいたせいで、外に出ると暑さを余計に感じてしまう。


「もちろんいいに決まってんじゃん!なになに、旅行のときに着ていくやつ?」


一気にテンションが上がる麻妃に、私まで嬉しくなる。
彼女の感情には特に引っ張られやすい。


「うん。パーティーに誘われたんだけど、そのときに着ていく服が欲しいんだ」

「は、パーティー!?何それちゃんとしたやつ?流川って一体何者なの」


私と同じようなことを思っている麻妃に、また笑みがこぼれる。
でも、パーティーについてはそんなに詳しく知らないかも。


流川くんのお祖父さんが主催で、場所はコテージ近くのホテル。
流川くんは‟堅苦しくない”とは言っていたけれど、彼と私とじゃ、その価値観というか差は違うだろうし……


「どういうパーティーなのかによって、着ていく服って違うし、流川に聞いてみたら?ドレスコードあればそれに合わせるし」

「な、なるほど、わかった。メールしてみる」


携帯を開いて、流川くん宛に設定する。


『流川くんの言ってたパーティーって、どんな感じですか?ドレスコードありますか?』

ピコン、と送信されると、1分もたたないうちに返事が届いた。


『一番近いのはレセプションパーティーかな。一応ドレスコードは、セミフォーマルってことになってるけど割とみんな自由だよ。よければドレス貸そうか?』


レセプションパーティー……確か交流のためのパーティーだったかな?
セミフォーマル、聞いたことはあるけれど、正直どんなものか想像はできない。


それにしても、ドレスを貸してくれるって、まさか流川くんのものだろうか。
私服であんなに綺麗だったんだから、ドレスなんて着て着飾ったらとんでもなく眩しいだろうな……


『大丈夫だよ、ありがとう!』


そう返事をして携帯を閉じる。
横でじっと見ていた麻妃は、ふーんと何やら考え込んでいた。
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