夜明け3秒前
「んー……これもいいね、でもこっちの方が……」


ショッピングセンターの中にあるドレスショップに着いてから、麻妃は楽しそうに色とりどりのドレスとにらめっこしていた。


親切な店員さんが声をかけてくれて、たまに助言をもらいながらドレスを手に取る。
私はというと、まずこんなキラキラしたお店に来たことがなくて圧倒されていた。


それに、ドレスコードもいまいちわかっていないし、ここは麻妃と店員さんにお任せしたい。

もし違ったものを着て行ってしまえば、お父さんに怒られるだけじゃなく、流川くんたちにも恥をかかせてしまうかもしれないし……


「パーティーは夜だし、カクテルドレスもいいね」


結婚式は昼と夜でドレスコードのマナーが少し違うとは知っていたけれど、パーティーもそうだとは知らなかった。


だから開催される時間なんて知らなくて、また流川くんにメールした。
他にも、ホテルの名前だとか、日程、招待されている人数、年代など、麻妃が聞いてくることを彼に聞く。


たくさん質問してしまったけれど、全部丁寧に答えてくれた。
麻妃は全部聞き終えたあと、こうしてドレスを選んでくれている。


それも関係あるんだ、ということばかりで、彼女を頼って本当によかったなと実感しているところだ。


「ねえ凛月、こんなのどう?」
「うん、すごくかわいいと思う」


だけど正直、自分が着るというのは想像できない。
派手すぎないものを選んでくれているけれど、まずドレスというのが私にとっては煌びやかすぎる。


「よし。じゃあこのドレスに決定して……色は明るいのがいいかな~」


彼女が手に取った綺麗なドレスをぼーっと見る。
そして、はっと大切なことに気がついた。


「待って麻妃!これ袖が肘くらいまでしかないよ、それも肩回りがレース素材で肌が見えちゃう」

「ん?そうね。でも着るのは夜だし、これくらいの露出なら問題ないと思うけど」


彼女はそう言っているが、私が伝えたいのはそういうことじゃない。
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