夜明け3秒前
お昼ご飯を食べた後、また電車に乗ってホテルへと向かった。
乗る時間が長くなるにつれ、さっきまでとは違い緑が多くなっていく。


見たことのない世界に目線を奪われていると、流川くんに声をかけられる。


「凛月、着いたよ」
「あ、ごめん!ありがとう」


車掌さんのアナウンスと共に電車が止まる。
降りると少し遠くに海が見えた。


「わあっ……!」


風が吹くと、潮の匂いがする。
広くて青い海は、テレビで見ていたよりも綺麗だった。


「海、初めて見た?」
「うん」
「そっか。じゃあ、連れてきてよかったな」


それは、海を見せることができてよかった、ということだろうか。
流川くんの方を見上げると、いつものようににこっと微笑まれて、歩き出す。


「ホテルはここから10分くらい歩いたところにあるんだ」
「そっか、海沿いのホテルって言ってたもんね」


それじゃあやっぱり、ホテルから海が見えたりするのかな。
なんだか急にわくわくしてきて、軽い足取りで彼について行く。


「あ、お手洗い行ってきてもいい、かな?」
「うん、俺も行ってくる」


待ち合わせは改札を出たところにして、駅のトイレに入る。
綺麗だけれど、個室は2つしかなくて1人並んでいた。


急いでいるわけではないけれど、流川くんを待たせてしまうのは申し訳ない。
こういうとき、男子はトイレが早いからいいなあなんて考えながら待った。
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