夜明け3秒前
「流川くんってほんとに綺麗だし、初めて名前を知ったのも"めっちゃ綺麗な美形がいる"ってみんなが言ってたからだけど……流川くんがみんなに好かれてるほんとの理由は、優しくて気遣いができて、話し上手で聞き上手な、そういう中身だよね」


羨ましいなあ、なんて独り言つ。
今まで考えたことはなかったけれど、当たり前だった。


こんな私を助けてくれて、誰も聞きたくないような話を聞いてくれて、逃げるために説得して、旅行にも連れてきてくれた。

彼は優しいひとだ。
だけど強くもあり、周りにいるみんなを笑顔にできる人。

だから、高校で名前の知らない人がいないくらいに人気者なんだ。
彼が美形なだけだったら、きっとまた違っていた。


流川くんが何も言わないことを不思議に思って、隣をちらっと見る。
すると、彼の顔が赤くなって、ぽかーんとしているのに気づいて焦った。


わ、私またやっちゃった……!?
美形だからとか、中身がとか、今思えばすごく失礼だった……!


というか何様だって感じだし……!
思ったことを伝えたかっただけで、すごいということを言いたかっただけなのに。


「ご、ごめんなさい!そういうつもりじゃ……!」


慌てて否定するけれど、彼の顔は赤いままだ。


「え、いやわかってる……!ごめん、そういうふうに言われたことなかったから、びっくりして」

「そ、そうだよね!?」


パニックになってどうしたらいいかわからない。
でも貶すつもりはなかったのって言わなくちゃ、そう思っていると彼が口を開く。


「あーごめん……凛月にそういう気がないのに照れたりして。でも、凛月が急に直球で褒めてくるから」

「……え、あ、そうだよね……ごめん……?」


彼が言ったことを少しずつ理解していく。
照れてた、褒めた……そっか、私が勘違いしていただけで、ちゃんと伝わってたんだ……
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