夜明け3秒前
一分もたたないうちに、トレーにグラスを3つのせて、清さんが戻ってきた。
テーブルにグラスを置くと、コツンといい音がする。


「待たせたね、さあどうぞ」


ありがとうございます、とお礼を言ってお茶を飲む。
冷えた飲み物はほてった体を冷やしてくれる。


ふうっと休憩して、大切なことを思い出した。


「あの、清さん。これ、よければもらってください」


母から預かったおかきを清さんに手渡す。
両手で丁寧に受け取ってくれたかと思えば、「おお」と驚いたような声がした。


「わざわざありがとう。わたしの好きなところのものだったから驚いたよ」


ははは、と目を細めて楽しそうに笑う表情は、やっぱり流川くんに似てる。


「それはよかったです、たぶん母が選んでくれたものなので……」


さすが、私の親だ。
こういう場面で何が喜ばれるかわかっているのは、あの性格のおかげなんだろうな。


「そうかい、ありがとう。さっそくいただこう」


キッチンからお皿を持ってくると、そこにおかきを盛る。
おかきの美味しそうな匂いがした。
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