夜明け3秒前
「ところで、2人は付き合ってるのかい?」


急にそんなことを聞かれて、声が出ないくらいに驚く。
対して、清さんはにこやかだ。


「なっ、だーかーらー!違うって前も言ったじゃん!」


隣の流川くんを見ると、照れているような、怒っているような表情をしていた。
少なくとも、ホテルのときのような平然な顔じゃない。


「はははっ、すまんすまん。2人を見ていると、野暮な質問をしたくなってしまってね」


心底楽しそうに笑う清さんと、ムッとしている流川くん。
流川くんが家に来て説得に来てくれたときや、この旅行中、彼は私よりも大人に見えた。

でも今の流川くんは等身大の高校生に見えて、なんだか不思議な気持ちになる。
同い年なんだから当たり前なのに。


「ふふっ」


思わず笑いがこぼれてしまって、流川くんと目が合う。


「ちょ、凛月まで、何笑ってんの!」

「ふふふ、ごめんね。流川くんもそんな表情するんだなと思って」


くすくす笑っていると、流川くんは「もー……」と言いながら頭をかいた。


「いい?じーちゃん。俺と凛月は、友達だからね」

「ああ、わかったわかった。凛月さん、千那と仲良くしてくれてありがとう」


優しく微笑んでくれる清さんは、とてもいい人だ。
私の周りの大人はほとんどこういうふうに接してくれないから、なんだか新鮮な気分だった。


「いえ、私の方が流川くんにお礼を言わないといけない立場なので……」

「そんなことないよ。俺の方こそありがとう、凛月」

「えっ、ううん……こちらこそありがとう」


とても温かい空間だった。
きっとあの家にいても、味わえないような空気。

ほとんど会うことのない、私の祖父と祖母に会いたくなった。
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