夜明け3秒前
ゆっくり休憩したあと、流川くんに家の中を案内してもらうことになった。


1階には、さっきまでいたダイニング、リビング、キッチンがあって、お風呂やトイレもある。
それから、清さんの寝室も。

2階には、私と流川くんの寝室が一室ずつ用意されていた。


「わあっ、すごい……!私の家の部屋より広い」

「はは、喜んでもらえたならよかった。好きに使ってくれていいから」


部屋に入ると、太陽の香りがする。
ベッドはふかふかで、机や棚も用意されていた。

眩しい、とまではいかないけれど、とても明るい部屋。
私の家がちっぽけなものに思えてしまうくらい、素敵な部屋だ。


清さんには頭があがらないな……
感謝していると、トントントンとノックが聞こえる。


「凛月、荷物置いたら散歩しに行かない?」
「行きたい!」


即答すると、流川くんは嬉しそうに笑った。


「じゃあ行こっか、連れて行きたい場所があるんだ」



そう言われてついて行くこと5分。
コテージの裏の森のような場所に、ベンチがぽつんと置いてあった。

2人で座ると少しきしんだ音がして不安になる。
でも。


「ここ涼しいね。なんだか落ち着くな」

「うん。ここさ、小さい頃から"秘密基地だ!"って、お気に入りの場所なんだ」


秘密基地……
確かにそんな感じがする。

人はいないし、緑のなかだし。
きっと、小さい子どもは最高に盛り上がる場所だろうな。


「秘密基地に案内してもらえて嬉しいな、ありがとう」

「どういたしまして。凛月は特別だから」


目が合うと、にこっと微笑んでくれる流川くん。
思えば、隣に座ってもあんまり緊張しなくなったな。

目が合ってもそらさないで話すこともできる。
最初に比べたら、とても仲良くなれた……と思う。

まあ、流川くんはもともとパーソナルスペースの狭い人だったけれど、今は彼のことを少しずつ知ってきているし……

胸を張って友達だって言える。
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