夜明け3秒前
清さんは楽しそうに声を出して笑う。


「ああそうだな、すまん。女性だけが料理するなんて考えはもう古いな」


楽しそうな清さんと、どこか納得いっていないような流川くん。
前にもあったけれど、2人の間でこういうことは頻繁に起こる。

清さんが何か言って、それに対して流川くんがムッとしたり、呆れたり、たまに困ったように焦ったりすることも。

ほとんどの場合私にはよくわからなくて、今のようにぽかーんと眺めていることが多い。


それでもこの2人を見ているのは楽しかった。
仲がいいのが伝わって、温かい気持ちになるから。

それに、流川くんのそういう表情はあまり見ることがないし、新鮮だ。
そんなことを言ったら私まで怒られちゃいそうだけど。


見ていて幸せだった。
自分にはないものも、こんなに近くにあるんだとわかって安心する。

そして少し苦しくなる。
羨ましいな、と思ってしまう。

寂しいな、と感じてしまう。
仕方のないことだけど、仕方のないことだから。

ああ、ダメだ。
また変なこと考えちゃった。

奥さんか。
私もいつか結婚したりするのかな。

そしたら、清さんの言う『いい奥さん』になれるのだろうか。
あまり想像できない。


でも、流川くんは確かにいい旦那さんになりそうだ。
きっと奥さんを大切にするだろうし、幸せな家庭が築けそう。

だけど、将来はもっとかっこよくなっているだろうし、モテモテだと大変そうだなあ、なんて。

そんなことを考えていたら、暗い気持ちはいつの間にかどこかへ行っていた。
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