夜明け3秒前


『親に逆らうなんて、お前は恩知らずだ!』


痛い、痛い。
ごめんなさい、もう言わないから。


『お姉ちゃんなのに、こんなこともできないの?』


辛い、辛い。
そんなこと言われるなら、お姉ちゃんとして生まれたくなかった。


『誰の金で生活できてると思ってるんだ、育ててもらってるんだから感謝しろ!』


苦しい、苦しい。
私、産んでほしいなんて頼んでない。

こんな思いするなら、生まれてくるんじゃなかった ー


「……はっ」


目を開けると、最近やっと目慣れてきた天井が見える。
夢だ、また酷い夢を見たんだ。


「…っ、はあ……はあ……」


大丈夫、大丈夫。
自分の腕で体を抱きしめて、ゆっくりと呼吸し落ち着かせる。


今まではうなされるほどの夢なんて見たことなかったのに。
どうして……

あの家にいても見なかったものを、なぜ遠く離れた今見なければいけないの。
私が、逃げているから……?

逃げたいのに逃げられない。
どうしようもなく怖くて、息が上手く吸えない。


まるで、暗くて何も見えない沼に手招きされて、引きずり込まれているよう。
このままだときっと、帰ってこられなくなる。

どこに、なんてわからないけれど。
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