15年目の小さな試練
「……大、丈夫」

 ハルちゃんの言葉におばさんは眉根を潜めた。さっきよりは良さそうに見えるけど、俺にだって、全く大丈夫には思えない。

「も…ダルいだけ、だから」

 ハルちゃんは、はあはあと息苦しそうにしながらも言葉を紡ぐ。

「寝て…たら、治る…から」

「よく、夜にあるやつみたいな感じ?」

「……ん」

 もしかして、あれか!?

 叶太がハルちゃんと結婚するための材料にしてた、ハルちゃんが夜中に具合が悪くなっても誰にも言わないで我慢してるっていう……。

 いくら、自然に治まると言っても、あの状態を黙っていちゃダメじゃないかな、ハルちゃん!?

 思わず、ハルちゃんを凝視してしまうくらいには驚いた。我慢強いなんてものじゃない気がする。

 なるほど、叶太が結婚を強行するはずだ。まあ、あいつの場合、それだけじゃなく、ハルちゃんの側にいたい想いが強いだけかも知れないけど。

「……じゃあ、取りあえず、家に帰ろうか。点滴くらいなら、家でもできるし」

「…あり…がと」

「もうしゃべらなくていいよ。しんどいでしょ」

 おばさんはハルちゃんの頭をそっとなでると、先生に向き直った。

「一応、状況だけ教えてもらっても良いかな。……あ、それと、晃太くん、悪いけど車行って、毛布取ってきてくれる?」

「あ、はい。すぐに!」

 つい勢いよく答えると、おばさんは笑いながら、

「慌てなくてもいいよ」

 と言った。


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