15年目の小さな試練
「陽菜はさ、まあ、あんな感じで端から見れば、ひどく弱くて脆くて、うっかり触ると壊れそうな感じじゃない?」

「……えーっと、そうですか?」

 確かに身体は弱いし細すぎるくらい細いけど、ハルちゃんの芯は結構強い印象がある。

 それを伝えると、おばさんはなるほどねと頷いた。

「そっか。晃太くんにはそう見えるのか」

 そうして、おばさんはコーヒーをぐいっと豪快に口にすると、ハルちゃんの病状を少し詳しく教えてくれた。

 最初の手術が生後すぐだとか、既に何度も余命宣告を受けていて、死にかけた事は両手の指の数でも足りないのだとか。

「陽菜はさ、無理をすると周りに迷惑をかけると分かっていて、だから、そんな無茶なことはしないんだよね。

 例えば、体調が悪いのに学校に行って、授業中に具合が悪くなったら、授業を止めることになるでしょ? そう言うのが嫌みたいで、小学何年生の頃からかな、無理そうだと思ったら最初から休むようになったんだよね」

 なるほどと頷く。気遣いの塊のようなハルちゃんらしい。

「まあ、さすがに高校生くらいになると、多少の無理も押してって事もあったけどね。

 それは学業的にも仕方ないのかなと思って、私たちは割と自由にさせていたのだけど、叶太くんにはそれでも無理してるように見えるみたいで」

 多分、幼い頃から、家族の誰より、外にいるハルちゃんと一緒にいて、ハルちゃんを見つめ続けているのが叶太だ。

 家ではハルちゃんも自分のペースでゆっくり過ごせていたのかも知れない。だけど、健康な子どもに囲まれる学校ではそうはいかず、叶太にはハルちゃんが無理をしているように見えたのかも知れない。

 この一週間、ハルちゃんと一緒に過ごして、叶太の心配が何となく分かった。
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