15年目の小さな試練
「……中一の冬、陽菜が学校帰りに倒れて肺炎を起こしたのって、晃太くん知ってる?」
「詳しくは知らないですけど、一応」

 当時、オレは高校三年生。明仁が深刻な顔をしていて、叶太がちょっとないくらいに動揺していたから、ハルちゃんの具合が相当悪いのだろうと思った。叶太がその後、部活をやめてしまったのもあって結構記憶に残っている。

「あの時、陽菜、何度か心停止して、本当に危なかったんだけどね」

 おばさんは事も無げに言うが、俺は驚いて声をなくす。

「ああ、やっぱり驚くよね。うん、だけど、割とよくあることなんだよ。あの子の場合、外でいきなりとかはなくて、手術の後とか、本当に調子悪くて入院してる時とか、そう言うのだから、ちゃんとこれまでも救命できている」

 いや、おばさん、ちょっと待って!

 さっき、軽い口調で何度も死にかけたって言ってたけど、心停止と言ったら、比喩じゃなく本当に一歩間違ったら死んでたって事だよね!?

 だけど、俺の驚愕をよそに、おばさんは淡々と話を続ける。

「あれは本当に叶太くんに申し訳ないことをしたと思っているんだけどね、その中一の時、叶太くん、陽菜の心停止の場に居合わせて、」

 ……え!?

「更に、蘇生の場も見ちゃって」

「……蘇生」

「ああ、つまり心臓マッサージと電気ショックね」

 おばさんはそこで小さくため息を吐く。

「面会謝絶で、家族しか会えないような状態だったんだけど、叶太くんはもう家族同然で、あの日も陽菜の病室に来てくれて」

 確かに、ハルちゃんが入院している時は叶太はほとんど毎日、病院に行っていた。既にお見舞いというレベルを超えていた。

 うん。付き添いって言った方がきっと相応しいくらいには、日参していた。
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