15年目の小さな試練
おばさんはふとハルちゃんの部屋のドアに目をやった。
「それから慌てて、あの時は怖い思いをさせて申し訳なかったと、叶太くんに話をしたのね。トラウマとかPTSDみたいになっているといけないから、ちゃんとケアしようと思って」
……確かに、それはトラウマになりそうだ。
世界一大切にしている女の子が、急に具合が悪くなって、自分の目の前で心臓が止まって、心肺蘇生を受けているなんて。俺にはまだそういう子はいないけど、想像しただけで胸がつぶれそうだ。
「でもね、叶太くん、すごいんだよね」
「ん? 叶太がすごい?」
「そう。叶太くん、陽菜がICUにいる間に、消防署に行って救命救急の講習受けてきたって言うの」
「……え?」
「心肺蘇生法も、AEDの使い方も覚えてきたって言うんだよ」
「……叶太が?」
「そう。しかも、消防署の人に頼み込んで、何回も通って、こんな時はどうするとか、もしこうだったらどうするとかも教えてもらったらしいよ」
おばさんは呆気にとられている俺を見て、にやっと笑った。
「驚くでしょ?」
「……はい」
いやホント、我が弟ながら末恐ろしい徹底ぶりだ。
「実のところ、ここに医者がいるのに、なんでわざわざ消防署行くかなぁとは思ったんだけど。まあ病院じゃ講習はやってないからね、それは置いといて。
そんな訳で、叶太くんのタフさには驚いたんだけど、やっぱり、一種のトラウマになったみたいで」
「……トラウマ、ですか?」
今一つ、話がつながらない。
「叶太くん、それ以来、ものすご~く過保護になったの」
「ああ、なるほど!」
そう来るか。
「それから慌てて、あの時は怖い思いをさせて申し訳なかったと、叶太くんに話をしたのね。トラウマとかPTSDみたいになっているといけないから、ちゃんとケアしようと思って」
……確かに、それはトラウマになりそうだ。
世界一大切にしている女の子が、急に具合が悪くなって、自分の目の前で心臓が止まって、心肺蘇生を受けているなんて。俺にはまだそういう子はいないけど、想像しただけで胸がつぶれそうだ。
「でもね、叶太くん、すごいんだよね」
「ん? 叶太がすごい?」
「そう。叶太くん、陽菜がICUにいる間に、消防署に行って救命救急の講習受けてきたって言うの」
「……え?」
「心肺蘇生法も、AEDの使い方も覚えてきたって言うんだよ」
「……叶太が?」
「そう。しかも、消防署の人に頼み込んで、何回も通って、こんな時はどうするとか、もしこうだったらどうするとかも教えてもらったらしいよ」
おばさんは呆気にとられている俺を見て、にやっと笑った。
「驚くでしょ?」
「……はい」
いやホント、我が弟ながら末恐ろしい徹底ぶりだ。
「実のところ、ここに医者がいるのに、なんでわざわざ消防署行くかなぁとは思ったんだけど。まあ病院じゃ講習はやってないからね、それは置いといて。
そんな訳で、叶太くんのタフさには驚いたんだけど、やっぱり、一種のトラウマになったみたいで」
「……トラウマ、ですか?」
今一つ、話がつながらない。
「叶太くん、それ以来、ものすご~く過保護になったの」
「ああ、なるほど!」
そう来るか。