15年目の小さな試練
 時間はある。さっき沙代さんに、ハルちゃんの相談事が終わったら声をかけるから、それまで夕飯は待って欲しいと頼んできたから。

 だけど、ここは俺から切り出した方が良いのかもしれない。

「もしかして、山野先生のこと?」

 俺が言うと、ハルちゃんは大きな目を見開き何度か瞬きをして、それから小さく頷いた。

「えっと、ね。……山野先生と話をしたいの」

「山野先生と、話?」

「うん。……あの、ね、わたし、ちゃんと説明できる自信がなくて。もし、分かりにくかったら、そう言ってね?」

 ハルちゃんはとても申し訳なさそうに俺を伺い見た。

「了解。ゆっくりでいいし、思った順番から話してくれて大丈夫だよ」

「ありがとう」

 ホッとしたように一つ息を吐いてから、ハルちゃんは話し出した。

「あのね、山野先生、わたしにだけ、少し難しい課題を出しているの」

 うん。知ってる。

 って言うか、少しじゃなくて、かなりだと思うよ、ハルちゃん。

 そう思ったけど、話の腰を折るのはダメだろうと突っ込まずにスルー。

「この前、見せてもらったね」

「うん」

 ハルちゃんは小さく頷いた。

「あの課題、もう止めさせてもらおうと思っていて」

「そうなんだ」

 叶太が動いたかな?

 そうは思ったけど、これまで何度か話した時、とても楽しそうに、そして嬉しそうに語っていたハルちゃんだったから、ちょっと驚いた。

 よく受け入れたな、と。

 ただ、あれはやっぱり普通じゃなかったから、ホッとしたのも本当。
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