15年目の小さな試練
「迷惑じゃない?」

「全然」

 それにしても、珍しい。
 こんな割とディープな話を、叶太抜きでハルちゃんから聞くなんて。

「ああ、そうだ。山野先生の空き時間を調べておこうか」

「……空き時間?」

「そう。ハルちゃんの授業がない時間で、山野先生も空いている時間に研究室に行けば、確実じゃないかな」

「そんな面倒かけちゃって良いのかな?」

 いかにも申しわけなさそうなハルちゃんに笑顔を返す。

「山野先生の研究室に入ってる友人がいるから問題ないよ」

「ありがとう。それじゃあ、お願いします」

 ハルちゃんは律儀にぺこりと頭を下げた。

「うん、任せて。……あ、ねえ、ところで、この話って叶太も知ってる?」

「うん。カナは学長先生に話に行くって言ったんだけど、わたしが自分で山野先生に話をするからって言ったの」

「あーなるほど。学長かぁ」

 確かに、あれだけの額の寄付金を出してりゃ、学長に直接話した方が早いよな。

「ハルちゃんはなんで叶太に任せなかったの? あいつじゃ頼りなかった?」

「え!? まさか!」

 ハルちゃんは大きな目をまん丸にして、両手を振って否定した。
 半分冗談だったんだけど、その反応があまりに可愛くて思わず笑ってしまう。

「晃太くん?」

「あはは。ごめんね。……別に叶太に任せられなくってもいいと思うよ?」

「あの、そうじゃなくって……」

 ハルちゃんは困ったように眉尻を下げた。

「ただ、自分で話さなきゃと思って」
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