15年目の小さな試練
「課題を止めて欲しいと頼むだけじゃないの?」

 まあ、自分で言えるならそれに越したことないけど、絶対自分で言わなきゃいけない内容でもないだろう。何しろ、多分誰に聞いても、山野先生に問題ありと言われるだろうし、ハルちゃん側に非はないのだから。

 ハルちゃんが結婚してて間に叶太が入るから若干ややこしくなってるけど、未婚だったら、親がクレーム付けたって何もおかしくない。

 だけど、ハルちゃんは俺の質問に、困ったように小首を傾げた。

「……どう言えばいのか、正直、悩んでるんだけど」

「ん? 普通に、体調が悪いから、もうできませんって」

 途中まで言ったところで、ハルちゃんがとても辛そうにキュッと唇を引き結んだ。ので、俺は、質問を変えた。

「……のは、言いたくないんだ?」

 ハルちゃんは、

「なんか違う気がして……」

 と小声で言った。

「でも、何を話せばいいのかは分からなくて」

 なるほど、相談の内容はいつどうやって話すかと、何を話すかの2つな訳だ。

 だけど、さてこれはどうしたものか?

 取りあえず、

「じゃあさ、ハルちゃん、一度ご飯でも食べて、ちょっと気分転換しよっか?」

「え? ……あ」

 ハルちゃんはふっと我に返って、壁の時計を見て、慌てて立ち上がった。

「ごめんね!」

 時計は七時過ぎという時刻を指していた。

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