もうきっと恋に落ちてる
あの時は夜だった。
顔なんてはっきりとは……
ううん、月明かりがあった。
照れたみたいに私を見てた。
「 手、出して 」
「 手?」
航留は手を広げて見せて、私にも手を出すよう言うと手のひらを合わせてきた。
初めての体温。
航留の体温を感じた。
中学の時、ちゃんと付き合っていたら手を繋ぎ感じる体温。
「 小さい手、これからは俺の手で守るから 」
不思議だった、好きでも嫌いでもない関心なかった航留から伝わる体温と言葉にトクン、トクン、と心の中で鳴ってた。
こんな事口にしちゃう奴なんだ…
どうしよう、返事しなきゃ。
でも、どうしよう…
中学の時から付き合ってるって事になってて、本当は違うんだけど付き合おうって言われたし、じゃあ私どうしたら……
「 悩むな、バカ 」
「 っ… 」
それはやっぱり突然でした。
何かの罰か、何かの洗礼か……
航留が私と合わせた手を握り引っ張った。
そして、キス。
キュッ…と瞼を閉じて、離れた航留の唇。
目を開ければわかる次の予感。
どんなにドキドキしていたか……
「 ただ頷けばいい、悩むな 」
言われるがまま、小さく首を縦に頷いて航留の微笑みと、改めての彼氏からキス。
心を奪われるってこういう事かと思った。
互いが何も知らず知ろうとしていなかった無関心の二人。
でも本当は私だけがそうだった。