冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
「……が言ったんだよっ」



「えっ?」



「だから誰が雫にブスって言ったんだよ‼︎」



小春が話題を切り出したところ、ヒロトが激昂して立ち上がった。


 
「ちょっ、ちょっと落ち着きなよヒロト」



慌てて小春が宥めたが、ヒロトは怒りが収まらない様子だ。



「仲間が馬鹿にされて落ち着けるかよ! 誰に言われたんだ雫? 俺がそいつをぶっ殺してやるよ!」



「えっ……と、誰だったけかな?」



眉間にしわを寄せたヒロトを久しぶりに見た。



ザ・ロックといった服装と髪型が周囲に威圧感を与えている……だろう。



一番奥の席で壁向きに座っている為、直接見えないが、店内が静まり返った事から他の客たちが此方へと注目しているのが見て取れる。



取り敢えずここはファミレスだから落ち着いてとでも言おう。



「ヒロト、ここファミレスだぞ。他の客に迷惑かけんな、兎に角落ち着けって」


 
偶然にもわたしの思考とトレースしたのだろうか、蓮はそう言い、ヒロトを無理矢理座らせた。



ヒロトは怒りが収まらない様だが、先ほどよりは落ち着きを取り戻している。



それにしても相当怒ってらっしゃる。いやいや、他人事では無い。わたしの為に怒ってくれているのだ。
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