冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
「そう言えば、まだ言ってなかったけど、アタシも北高に行く事にしたから」



彼女はそう言って、澄ました表情でカップを口へと運んだ。



「ゴメンね小春〜。折角、青楓高校受かったのに」



「別にいいわよ。高校なんで何処でもいいし」



「小春~。わたしたち死ぬまで友達だよー」



「ちょっ、雫。鼻水出てるわよ! 汚いわねっ」



うーっ、持つべきものは友達だよね。馬鹿なわたしの為に、皆んな合わせてくれるなんて。



それにしても蓮とヒロトは小春の話に驚く様子は見せなかった。こうなる事が分かっていたのだろうか?



「オブリガードだよ」



わたしは、何故か覚えたポルトガル語の『ありがとう』をここぞとばかりに使ったのだ。



「ホントに雫は変わってるわね。まあ、これで高校も七人一緒か」



小春のこの言葉に、突如外野が乱入してきた。



「えー! ヒ、ヒロト君も北高に進学するの⁉︎ 聞いてないよ!」



そう。わたしの後ろの席で背後霊の様に息を殺していた坂口だ。
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