冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
多くの新入生たちの視線が此方に向けられているのだ。動画配信で既に有名人となっている三人。皆、躊躇して声までは掛けて来ないが、明らかに周りはざわついている。
小春たちはこんな様相も慣れたもので、気にかける様子もない。
しかし、わたしはこの視線が嫌いなのだ。彼らの視線の最後には『アイツは誰だ?』と、声も無く訴えかけてくる。そう––––モブ感が高まるのだ。
終いには金魚の糞と陰口を叩かれる始末。
何もやってないのにこの鬼畜の如き仕打ち。わたしは人生とはさも不公平なものだと、中二の時点で悟りを開眼した次第である。
向かうはこの先にある体育館前である。
入学式は十四時から式典が行われる。
新入生は体育館前でクラス表を確認してから、十三時までに各教室へと集合する運びだとなっていた。
体育館前は新入生たちでごった返している。先ずは自分の名前を探す。
「げっ! 七組もあるのかよ。探すの面倒だなっ」
雄大は名前の羅列から、自分の名前を見つける事にげんなりした様子だ。
七人が同じクラスになる事はあり得ないだろうが、仲間内の一人でも、出来れば蓮が同じクラスになりますように、と願いを込めて自分の名前を探す。
クラス表は各クラス毎に名前順だ。宮橋なので下の方に名前があるだろうと横に流し見ていくと、直ぐに発見した。三組だ。