冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
「やっ、やばい……お腹が……」



余りにも唐突な事もあり、声が漏れてしまった。



––––そう。わたしは今、急激な腹痛、つまり便意に見舞われているのだ。



何コレ……。野球で例えるならまだ一回の表。既に腹痛度80パーセントに至ってる。



普段なら腹痛度30パーセントから始まり、自身の生理現象の前兆に気付く。しかし、今日はあろうことか八割からのスタートだ。



「な、何とか……耐えれるか」



わたしは黒板の上に掛けられている時計の時刻を確認した。休憩時間までは残り十五分。



残り時間と腹痛度から逆算すれば、乗り切れるかどうか瀬戸際の状態である。



だが、わたしは自身にこの場での待機を命じた。


今、トイレに行けば全てから解放される。だが、入学式早々、見知らぬクラスメイトたちに大に行ったと思われるのも恥ずかしい。



腹痛度を抑えるために、腹式呼吸や大臀筋に力を加えるなど試みるがあまり効果がない。



家で貧相な自身の身体つきを見て、色々大きくしようとジョッキで牛乳を飲んだのがあたったのか、はたまた権之助の祟り––––。
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