冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
わたしが考えついた緊急脱出プログラム。
まずは最善の結果から逆算する。
一番良いのはクラスメイトたちから、お手洗いに行ったと思われる事なく、この場から立ち去る事だ。
要は体調不良で保健室に行くなど、他の名目があればよいのだ。
実際にこの程度の事は直ぐに思いついていた。
だが、この方法には一つの疑念が生じ、実行に移せなかったのだ。
もし、わたしが担任に体調不良を申し出た場合、恐らく担任は誰かを保健室まで付き添うように指示するだろう。
そうなった場合どうなるか、お分りだろうか?
––––答えは『クラスメイトたちは戸惑う』である。
見たところ、中学時代の知り合いは蓮以外にいない。
初見であるクラスメイトの介抱など、どう考えても面倒ごとである。
無論、わたしが小春並みの美少女であれば、男子どもは我先にと介抱を名乗り出るだろう。
だが、残念ながら、わたしにはそのポテンシャルは無い。
となれば、担任の次の行動は簡単に推測出来る。『同じ中学出身の生徒を探す』である。
担任が同じ中学出身者を確認すれば、蓮は間違いなく名乗り出る。こうなれば最後、蓮と保健室に向かう最中、トイレに駆け込まなければならない。
恋する乙女にとっては避けるべきイベント。フラグが立つどころかろか消滅し兼ねない。