冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
わたしはそう言ってバタバタと階段を上り、自室へと戻った。バタンッと勢いよくドアを閉める。
「クレイジーだよ。あの人ホントにクレイジー主婦だよ」
わたしと蓮、それに小春は家族ぐるみの仲だ。親同士も至極仲が良い。
小学生の頃はわたしが蓮や小春の家に泊まりに行ったり、その逆もあった。
だが、思春期となれば同性の小春はともかく、どうしても蓮の事は意識してしまう。
何となしにお泊まりなどする機会は無くなっていったのだ。蓮もわたしの事を異性として意識しているのだろうか……?
「あー、お母さんのせいでなんかモンモンする~!」
ゴシゴシと頭をかき、パタリとベットの上へダイブした。
わたしは寝転んだまま、頭をボーとさせている。
静かだ––––。
鳥のさえずりと、たまに家の前を通るトラクターの音のみの世界。
目は開いているものの、少し経てば自然と寝てしまいそうな心地良い時間。
わたしの薄れゆく意識と同調して、物語も空白を描いたのだ。