冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
雫のドキドキデート
【雫side】


相楽と向井は二週間の停学となった。

彼女たちの自白によって解決されたのだ。

何がなんだか分からないが、取り敢えずわたしのイジメ問題は終止符を打ったのだ。

 
わたしは土曜日の休日をだらだらと過ごし、貴重な女子高生の休日を無駄に消費する。

ベッドに膝をつき、厚手のカーテンを端に手繰り寄せて窓を開いた。

月明かりだけの暗闇に蓮の部屋から灯りが漏れている。

彼の部屋にかけられたレースのカーテンに阻まれ、向こう側を見ることは出来ない。

昔はここから大声で呼べば、蓮が窓からひょっこり顔を出してよくお喋りしたものだ。

いつからかそういった事は無くなってしまった。

大きく欠けた月を見上げると、孤島に一人取り残されたかのような孤独感と寂しさが冷んやりと胸のあたりを締め付けたのだ。


わたしは諦めて勉強机へと移動し、小説の続きを書きしたためる。




ふと勉強机に置かれた時計に目をやると、時間は22時を回っている。
 
「一段落ついたし、今日はここまでにしよ」

相棒のノートパソコンをパタリと閉じ、スマホを手に取った。

チャットアプリに登録されたグループチャット『臨時同盟』を開く。わたし以外の三人は既に退出している。

確かに問題は解決したのだから、このグループを維持する必要はない。

わたしは躊躇しながらも自身もグループから退出させたのだ。

スマホを持ったままベッドへとダイブした。
天井には見慣れすぎた円盤型の蛍光灯だけが見える。

「あーあ、何か面白い事ないかなー」

ここ数日、何処と無く非日常的な雰囲気があった。

仲の悪かった玲奈と絡んだり、モブだと思っていた雪ちゃんが実はスパイ好きだったりと。

陰湿なイジメから解決された開放感もあってなのか、次なるワクワクする事が起こる事を望んでいるようだ。

「森さん明日暇かな?」

何となしにそう思い立ったわたしは、森さんへ電話をかけてみた。
 
「うーん。もう寝てるのかなぁ?」

少し粘ってみたが森さんは電話に出なかった。
いや、少しでは無いな。まーまー粘っていただろう。
 
「明日の休日も、わたしはゴミのような一日を過ごすのか……」

と、自堕落な休日をため息混じりに覚悟した時、森さんから折り返しの電話がかかってきた。

『どうしたの雫? こんな時間に』

『ゴメンね。寝てるとこ起こしちゃった?』

『大丈夫、起きてたから。ちょっと電話してただけだから』

……こんな時間に電話とは。

もしかしたら真面目な顔して以外に彼氏がいるなんて裏切り行為が行われてるのかも知れない。

わたしの前頭葉の野次馬的な思考回路がピコピコと反応を示す。

『なになに森さーん。こんな時間に電話って、もしかしてもしかしたりする~』

『……雫ニタニタしてるでしょ』

『し、してないよ。只、電話相手が誰かなーって?』

『んー、別に言ってもいいけど、訊かない方が良いと思うけど』

意味深! 凄く意味深。わたしが聞かない方がいいって、ここで聞かなかったらこの後、安眠につけないんだけど。

『えーと、別に気にしないから教えてよ?』

『…………』

な、何、この間⁉︎ 

『先に言っておくけど、昨日出された課題でどうしても解らない問題があって、彼に教えてもらってただけだからね』

彼⁉︎ ってことはやはり男? それに何も訊いていないのに言い訳と言う名のオブラート包み。
 
『……彼って誰?』

『月島くん』
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