冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
【小春side】
「蓮と雫が遊園地デート……か」
ふむ。あり得そうであり得ないシチュエーションね。
どちらが誘ったかは一目瞭然。
蓮からだろう。雫にそんな勇気はない。
私は携帯と財布だけを持って駅前のコンビニへと出掛けた。
バスロータリーのベンチに腰掛け、コンビニで買ったアイスを一口かじる。そして空いている片手で携帯を操作する。
「それにしても、蓮も何を考えてるんだか」
携帯画面に映るのは、蓮と雫が遊園地デートを楽しんでいる写真だ。
まあー、楽しそうにしてるのはもっぱら雫で蓮は無表情でもあるのだが、世間一般ではデートとみなすだろう。
一時間前の二人の様子がツイッターで拡散されているのだ。それも盛大に。
若者に限定すれば、日本国内で蓮を知らない者はほぼ皆無。昼夜テレビに出ているアイドル何か相手にならないほどの知名度と人気を誇っている。
そんな蓮が地元を離れて、人の多い県隣の遊園地で顔を隠さずに行動すればこうなる事は必至。
頭の良い蓮がそんな事に気付かない筈が無い。
「うわー」
ツイッターアプリをスライドさせると、蓮の女性ファンたちの阿鼻叫喚、カオスなつぶやきで埋め尽くされている。
そして行き場の無い嫉妬が雫に向けられているのだ。
「醜いわねこの人たち。雫に嫉妬したところで最初から勝ち目なんてないのに」
私はそう口にして、棒の根元に残ったアイスを食べきったのだ。
「まあ、私は既に退場した身な訳だし関係ないか」
そう。私の初恋はとうの昔に終わっている。勿論、悲しい結末でだ。
私は中学一年の時、バレンタインデーに蓮へ告白した。結果は玉砕。他に好きな人がいるときっぱり断られた。
端から勝算は無かった。
蓮が私に対してそういった甘味な視線を向けた事は一度も無かったからだ。
それでも告白せずにはいられなかった。当時の私は焦っていたのだろう。雫に蓮を取られることを座して待てなかったのだ。
「そう言えばあの時は雫に酷いこと言ってたな」
頭では分かっていたものの、振られた衝撃は想像以上に大きく、私は当時それを雫にいやらしくもぶつけていたのだ。
今度、機会があったら謝るか。
私は気持ちの良い休日をアイス一本で終えようとしていた。
「小春ちゃん? 小春ちゃんだよね?」
私もまずまずの知名度。見ず知らずの人に声を掛けられることは多々ある。
「ごめんね。私、サインとかない……から」
瞳に飛び込んできてのは、サラサラとした長い髪、太陽の光が透き通るほどの白い肌……。
「やっぱり小春ちゃんだ。久しぶりね」
清楚な白いワンピースを着こなす肌の白い少女は、満面の笑みを携えている。
「……とっちゃん?」
「良かった。覚えていてくれて」
とっちゃんとは、私たちのもう一人の幼馴染だった子だ。一つ年上で、私たちが小学五年生の頃に海外へと引っ越した。
私が憧れていた唯一の人。綺麗な長い髪もとっちゃんを真似たものだ。
幼い頃、私と雫がはしゃいで遊んでるのを何時もニコニコと眺めていた優しい笑顔も健在だ。
そして彼女の隣にはいつも蓮がいたのだ。
「忘れる訳ないじゃん!」
久しぶりの再会に嬉しくなり彼女に抱きついた。彼女もギュッとしてくれた。
久しぶりに嗅ぐ彼女の甘い香りはやっぱり心地良い。
「蓮と雫も喜ぶよ!」
「でも明日にした方が良さそうね」
「えっ?」
「これ。二人の邪魔をしたら悪いもの」
彼女は笑って携帯画面をこちらに差し向けた。
先ほど拡散された蓮と雫の写真だ。
「それにこれから両親と親戚周りもあるから。ちょっと時間が空いたから三人に逢いたいなって思ったんだけどね。でも小春ちゃんに会えて良かった」
「蓮と雫には伝えておくよ。当分は日本にいるの?」
「今回は三日だけかな。でも、パパの転勤で夏には戻って来るの。パパとママは今、帰国してからの住む家を探してるところ」
とっちゃんはそう言って駅へと戻って行った。
私は電車が見えなくなるまで見送ると、ふとある事に気付いた。
「蓮が私を振った時に言った、好きな人ってまさか……」
「蓮と雫が遊園地デート……か」
ふむ。あり得そうであり得ないシチュエーションね。
どちらが誘ったかは一目瞭然。
蓮からだろう。雫にそんな勇気はない。
私は携帯と財布だけを持って駅前のコンビニへと出掛けた。
バスロータリーのベンチに腰掛け、コンビニで買ったアイスを一口かじる。そして空いている片手で携帯を操作する。
「それにしても、蓮も何を考えてるんだか」
携帯画面に映るのは、蓮と雫が遊園地デートを楽しんでいる写真だ。
まあー、楽しそうにしてるのはもっぱら雫で蓮は無表情でもあるのだが、世間一般ではデートとみなすだろう。
一時間前の二人の様子がツイッターで拡散されているのだ。それも盛大に。
若者に限定すれば、日本国内で蓮を知らない者はほぼ皆無。昼夜テレビに出ているアイドル何か相手にならないほどの知名度と人気を誇っている。
そんな蓮が地元を離れて、人の多い県隣の遊園地で顔を隠さずに行動すればこうなる事は必至。
頭の良い蓮がそんな事に気付かない筈が無い。
「うわー」
ツイッターアプリをスライドさせると、蓮の女性ファンたちの阿鼻叫喚、カオスなつぶやきで埋め尽くされている。
そして行き場の無い嫉妬が雫に向けられているのだ。
「醜いわねこの人たち。雫に嫉妬したところで最初から勝ち目なんてないのに」
私はそう口にして、棒の根元に残ったアイスを食べきったのだ。
「まあ、私は既に退場した身な訳だし関係ないか」
そう。私の初恋はとうの昔に終わっている。勿論、悲しい結末でだ。
私は中学一年の時、バレンタインデーに蓮へ告白した。結果は玉砕。他に好きな人がいるときっぱり断られた。
端から勝算は無かった。
蓮が私に対してそういった甘味な視線を向けた事は一度も無かったからだ。
それでも告白せずにはいられなかった。当時の私は焦っていたのだろう。雫に蓮を取られることを座して待てなかったのだ。
「そう言えばあの時は雫に酷いこと言ってたな」
頭では分かっていたものの、振られた衝撃は想像以上に大きく、私は当時それを雫にいやらしくもぶつけていたのだ。
今度、機会があったら謝るか。
私は気持ちの良い休日をアイス一本で終えようとしていた。
「小春ちゃん? 小春ちゃんだよね?」
私もまずまずの知名度。見ず知らずの人に声を掛けられることは多々ある。
「ごめんね。私、サインとかない……から」
瞳に飛び込んできてのは、サラサラとした長い髪、太陽の光が透き通るほどの白い肌……。
「やっぱり小春ちゃんだ。久しぶりね」
清楚な白いワンピースを着こなす肌の白い少女は、満面の笑みを携えている。
「……とっちゃん?」
「良かった。覚えていてくれて」
とっちゃんとは、私たちのもう一人の幼馴染だった子だ。一つ年上で、私たちが小学五年生の頃に海外へと引っ越した。
私が憧れていた唯一の人。綺麗な長い髪もとっちゃんを真似たものだ。
幼い頃、私と雫がはしゃいで遊んでるのを何時もニコニコと眺めていた優しい笑顔も健在だ。
そして彼女の隣にはいつも蓮がいたのだ。
「忘れる訳ないじゃん!」
久しぶりの再会に嬉しくなり彼女に抱きついた。彼女もギュッとしてくれた。
久しぶりに嗅ぐ彼女の甘い香りはやっぱり心地良い。
「蓮と雫も喜ぶよ!」
「でも明日にした方が良さそうね」
「えっ?」
「これ。二人の邪魔をしたら悪いもの」
彼女は笑って携帯画面をこちらに差し向けた。
先ほど拡散された蓮と雫の写真だ。
「それにこれから両親と親戚周りもあるから。ちょっと時間が空いたから三人に逢いたいなって思ったんだけどね。でも小春ちゃんに会えて良かった」
「蓮と雫には伝えておくよ。当分は日本にいるの?」
「今回は三日だけかな。でも、パパの転勤で夏には戻って来るの。パパとママは今、帰国してからの住む家を探してるところ」
とっちゃんはそう言って駅へと戻って行った。
私は電車が見えなくなるまで見送ると、ふとある事に気付いた。
「蓮が私を振った時に言った、好きな人ってまさか……」