冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
昼休みの時間帯が一番クラスのグループ分けを鮮明にさせる。
教室を眺めると、談笑しながら昼食を楽しむクラスメイトたち。
そんな情景を目の端に捉えながら、サンドイッチを手に取り小さく噛り付いた。
一人の少女と目が合った。
彼女は席を立ち、艶やかな黒髪を靡かせながらこちらへと向かってくる。
私は視線を手元にあるタンブラーへと移し替えた。そうやって拒否の心情を示唆したのだ。
だが、彼女はそんな事を気にする様子もなく話しかけてきた。
「坂口さん、一人で食べてるならこっちに来なよ」
無視する訳にもいかない。仕方なく、身体を彼女へと向け答えた。
「誘ってくれて有難いけど、私のことは気に掛けて貰わなくても結構よ、一ノ瀬さん」
「別に気に掛けたつもりは無いんだけど」
「……そう。それなら良かったわ」
素っ気ない態度の私を、彼女は満月の様な瞳でじっと見やった。
……嫌われてしまっただろうか。
誘ってくれたのが一ノ瀬小春でなければ、私は喜んで食事を共にしただろう。だが彼女とは仲良くなんて出来ない。
「それじゃー、行こっか。これ持ってあげるから、サンドイッチは自分で持ってきてね」
彼女は私の机の上に置いてあるタンブラーを手に取った。
「ちょっと! 貴方、自分で気に掛けて無いって言ったばかりでしょ。同情なんて不要よ!」
「同情? 同情なんかしてないわよ」
「……じゃあ何で?」
「お昼を一緒に食べるのに理由なんて必要ある?」
「……有るわよ」
理由はある。私にもプライドがある。
「あるんだ。理由?」
彼女は首を少し傾げ、私の言葉を待っている。
理由を話せば彼女は徹底的に私を敵対視するだろう。それを享受する心構えで私は答えた。
「私が一ノ瀬さんと食事しない理由。それは貴方が宮橋さんの親友だからよ」
「私が雫の親友だから?」
「そうよ」
「そっか。確か坂口さん、雫のこと嫌ってたんだっけ?」
「そうね大嫌いよ。だから一ノ瀬さんとも仲良く出来ないの。分かってくれた」
「ぜーんぜん分かんない。逆に何で雫のことがそんなに嫌いなのか興味出てきたよ。ほらっ、これ全部持っていくわよ」
「ちょっ……と!」
一ノ瀬小春は机の上に置いてあるサンドイッチまでもを強引に取り上げて、窓際の自席へと戻って行ったのだ。
私はすぐさま席を立ち、彼女を追いかけた。
「おせーよ小春」
「ごめんごめん。それよりさやか、そっちの机をこっちにくっつけて」
一ノ瀬小春とは一体どんな人物なのだろうか。
私の否定的な態度も、棘のある言葉も意に返さない様子だ。
私は只立ち尽くし、一ノ瀬小春と神宮さやかのセッティングを呆然と眺めていたのだ。
その後、彼女たちと一緒に昼食をとり、五限目の予鈴が鳴るまでお喋りに花を咲かせた。
私が宮橋雫を嫌いな理由もしつこく聞いてきた為、ありのままを話した。
親友への悪口。罵詈雑言を不思議な事に彼女たちは怒ることもなく、笑いながら訊いてくれたのだ。
話してみて判かった事なのだが、二人は私が今まで彼女らに抱いていた印象とは異なる人物像であり、意外と話が合ったのだ。
神宮さやかは男勝りな口調で取っ付き難い印象であったが、稀に見せる笑顔がとても可愛いらしい。
一ノ瀬小春に対しては、美少女を鼻にかけた上から目線な印象を持っていたが、全くそんなこと無くフラットな人物であった。
五限目の授業中、机の中に閉まっている携帯がブルッと短く振動音をたてた。
教壇に立つ教師の目を盗み、机の下に隠しながら画面を確認する。
チャットアプリの通知が一つ届いている。一ノ瀬小春からだ。
そこには『二組トリオ』と名付けられたたグループへの招待が記されていた。
窓際へと視線を向けると、彼女はこちらに気付き、ニコリと微笑んだのだ。
教室を眺めると、談笑しながら昼食を楽しむクラスメイトたち。
そんな情景を目の端に捉えながら、サンドイッチを手に取り小さく噛り付いた。
一人の少女と目が合った。
彼女は席を立ち、艶やかな黒髪を靡かせながらこちらへと向かってくる。
私は視線を手元にあるタンブラーへと移し替えた。そうやって拒否の心情を示唆したのだ。
だが、彼女はそんな事を気にする様子もなく話しかけてきた。
「坂口さん、一人で食べてるならこっちに来なよ」
無視する訳にもいかない。仕方なく、身体を彼女へと向け答えた。
「誘ってくれて有難いけど、私のことは気に掛けて貰わなくても結構よ、一ノ瀬さん」
「別に気に掛けたつもりは無いんだけど」
「……そう。それなら良かったわ」
素っ気ない態度の私を、彼女は満月の様な瞳でじっと見やった。
……嫌われてしまっただろうか。
誘ってくれたのが一ノ瀬小春でなければ、私は喜んで食事を共にしただろう。だが彼女とは仲良くなんて出来ない。
「それじゃー、行こっか。これ持ってあげるから、サンドイッチは自分で持ってきてね」
彼女は私の机の上に置いてあるタンブラーを手に取った。
「ちょっと! 貴方、自分で気に掛けて無いって言ったばかりでしょ。同情なんて不要よ!」
「同情? 同情なんかしてないわよ」
「……じゃあ何で?」
「お昼を一緒に食べるのに理由なんて必要ある?」
「……有るわよ」
理由はある。私にもプライドがある。
「あるんだ。理由?」
彼女は首を少し傾げ、私の言葉を待っている。
理由を話せば彼女は徹底的に私を敵対視するだろう。それを享受する心構えで私は答えた。
「私が一ノ瀬さんと食事しない理由。それは貴方が宮橋さんの親友だからよ」
「私が雫の親友だから?」
「そうよ」
「そっか。確か坂口さん、雫のこと嫌ってたんだっけ?」
「そうね大嫌いよ。だから一ノ瀬さんとも仲良く出来ないの。分かってくれた」
「ぜーんぜん分かんない。逆に何で雫のことがそんなに嫌いなのか興味出てきたよ。ほらっ、これ全部持っていくわよ」
「ちょっ……と!」
一ノ瀬小春は机の上に置いてあるサンドイッチまでもを強引に取り上げて、窓際の自席へと戻って行ったのだ。
私はすぐさま席を立ち、彼女を追いかけた。
「おせーよ小春」
「ごめんごめん。それよりさやか、そっちの机をこっちにくっつけて」
一ノ瀬小春とは一体どんな人物なのだろうか。
私の否定的な態度も、棘のある言葉も意に返さない様子だ。
私は只立ち尽くし、一ノ瀬小春と神宮さやかのセッティングを呆然と眺めていたのだ。
その後、彼女たちと一緒に昼食をとり、五限目の予鈴が鳴るまでお喋りに花を咲かせた。
私が宮橋雫を嫌いな理由もしつこく聞いてきた為、ありのままを話した。
親友への悪口。罵詈雑言を不思議な事に彼女たちは怒ることもなく、笑いながら訊いてくれたのだ。
話してみて判かった事なのだが、二人は私が今まで彼女らに抱いていた印象とは異なる人物像であり、意外と話が合ったのだ。
神宮さやかは男勝りな口調で取っ付き難い印象であったが、稀に見せる笑顔がとても可愛いらしい。
一ノ瀬小春に対しては、美少女を鼻にかけた上から目線な印象を持っていたが、全くそんなこと無くフラットな人物であった。
五限目の授業中、机の中に閉まっている携帯がブルッと短く振動音をたてた。
教壇に立つ教師の目を盗み、机の下に隠しながら画面を確認する。
チャットアプリの通知が一つ届いている。一ノ瀬小春からだ。
そこには『二組トリオ』と名付けられたたグループへの招待が記されていた。
窓際へと視線を向けると、彼女はこちらに気付き、ニコリと微笑んだのだ。