冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
学校近くの駅までは森さんと帰る。森さんと友達になってからはこのパターンが多い。

駅から学校迄の地獄の坂道が、帰りしなには追い風となり、軽快に足を前へと進めさせてくる。

付かず離れずの前方には玲奈たち三人が横並びに歩いている。

彼女たちとは地元が同じ為、一緒に帰ろうと提案したが、玲奈に秒で断られてしまった。

しかも被せ気味で……。


わたしは前を歩く凸凹なトリオを視界に入れつつ、学にも為にもならないような世間話や時事ネタを、隣を歩く森さんへと投げかける。

森さんは一方的に流れるラジオを聴くかのようにリスナーとなっていた。

そんなマシンガントークを繰り広げても終焉はすぐやって来る。学校から駅までの距離は物足りさの余韻を残すぐらいに近いのだ。

駅へ辿り着くと、家が逆方向にある森さんとは別々のプラットホームへと別れた。


ホームへ駆け上がると、線路を挟んで向こう側にいる森さんへと手を振った。

森さんは笑顔で手を振り返し、丁度良い間合いで椅子に座り本を読み始めた。

一人ぼっちとなったわたしは玲奈一行の元に歩みを進め、強引にパーティーへと加わった。

玲奈はプイっと拒否反応を示したが、雪と若菜は困り顔を見せつつも会話に入れてくれたのだ。
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