冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
ヒロトの声によって思考世界から現実世界に連れ戻された。
危ない、危ない。甘美な妄想にどっぷりとトリップしていたようだ。甘いのはいつの間にか目の前に運ばれてきているショートケーキだけにしておこう。
妄想の続きは家に帰ってからたっぷり出来る。
わたしはケーキの上に乗った大粒のイチゴを摘み、皿の端へとストックする。
「何だ雫。苺嫌いだっけ?」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあなんで横に避けたんだ」
「分かってないなーヒロトは。わたしは大好きなものは最後にとっておくタイプなのだよ」
そう言うと、ヒロトはフォークで所有するケーキのイチゴを一刺しし、わたしの皿へとコトリと置いた。
「なんだ、あれだ。俺は苺嫌いだからな」
「そうなんだ。ラッキー」
彼は頭を掻きながら、わたしから視線を横へと外した。
ラッキーにもイチゴをゲットしたわたしはハッとある事に気付いた。
恐る恐る隣を窺う。
隣に座る少女は唇をギュッと噛み締め、引きつった笑顔を浮かべている。
そしてテーブルで死角となっている膝上にはプルプルと握り拳が小刻みに振動している。
「そ、そう言えば、ヒロト最近調子どーよ? 前に蓮がヒロトのギターを認めていないとか言ってなかったっけ?」
咄嗟に話題を切り出した。
玲奈も会話に混ぜれば勘違いな嫉妬的感情も治まるだろう。
「いや、全然だ。何がダメなのか分からねーよ」
「でも、直接言われた訳じゃないんでしょ? ヒロトの勘違いとかじゃないの?」
「ボーカルの蓮がまだギターを握っている事と、ライブを始動させない事が俺を認めていないって証拠さ」
「ふーん。それなら蓮に何がいけないのか直接聞けばいいじゃん?」
バンドや音楽のことは1ミリも分からない。だが、直接聞く事が手っ取り早い方法である、ということぐらいはわたしにも分かる。
しかしヒロトは黙ったまま、アイスカフェラテを手に取り口へと運んだのだ。
「プライド……だよね」
一瞬の沈黙に玲奈は言葉を差し込んだ。
危ない、危ない。甘美な妄想にどっぷりとトリップしていたようだ。甘いのはいつの間にか目の前に運ばれてきているショートケーキだけにしておこう。
妄想の続きは家に帰ってからたっぷり出来る。
わたしはケーキの上に乗った大粒のイチゴを摘み、皿の端へとストックする。
「何だ雫。苺嫌いだっけ?」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあなんで横に避けたんだ」
「分かってないなーヒロトは。わたしは大好きなものは最後にとっておくタイプなのだよ」
そう言うと、ヒロトはフォークで所有するケーキのイチゴを一刺しし、わたしの皿へとコトリと置いた。
「なんだ、あれだ。俺は苺嫌いだからな」
「そうなんだ。ラッキー」
彼は頭を掻きながら、わたしから視線を横へと外した。
ラッキーにもイチゴをゲットしたわたしはハッとある事に気付いた。
恐る恐る隣を窺う。
隣に座る少女は唇をギュッと噛み締め、引きつった笑顔を浮かべている。
そしてテーブルで死角となっている膝上にはプルプルと握り拳が小刻みに振動している。
「そ、そう言えば、ヒロト最近調子どーよ? 前に蓮がヒロトのギターを認めていないとか言ってなかったっけ?」
咄嗟に話題を切り出した。
玲奈も会話に混ぜれば勘違いな嫉妬的感情も治まるだろう。
「いや、全然だ。何がダメなのか分からねーよ」
「でも、直接言われた訳じゃないんでしょ? ヒロトの勘違いとかじゃないの?」
「ボーカルの蓮がまだギターを握っている事と、ライブを始動させない事が俺を認めていないって証拠さ」
「ふーん。それなら蓮に何がいけないのか直接聞けばいいじゃん?」
バンドや音楽のことは1ミリも分からない。だが、直接聞く事が手っ取り早い方法である、ということぐらいはわたしにも分かる。
しかしヒロトは黙ったまま、アイスカフェラテを手に取り口へと運んだのだ。
「プライド……だよね」
一瞬の沈黙に玲奈は言葉を差し込んだ。