冴えない私の周りは主役級ばかり~雫の恋愛行進曲〜
中庭を抜けると、グラウンドの横幅ほど続く長い石段がある。
石段を下るとグラウンドだ。
十段しかないのだが、一つ一つの段差が大きく、もっぱら観覧席の様相である。
私は石段の中腹にちょこんと体育座りして、グラウンドを眺めた。
森さんは率先して、クラスメイトたちに指導している。三組女子の中で一番足の速い彼女の周りには、自然と人が蛆虫のように集まっている。
一方、私は二人三脚の相方が来るまでソロプレーで待機状態なのだ。
掃除当番で遅れている相方がバックレる事を切に願う次第である。
短パンのため、膝下が太陽にさらされる。
紫外線から守るようにジャージ越しの両腕で、真っ白な膝下を隠した。
「団子虫みたいだな」
私が座る石段の一つ上にいつのまにか腰をかけていた蓮はそう言って、私の頭をポンと軽く手をついた。
「だって日焼けしちゃうじゃん」
「雫は白過ぎるから、日焼けしてもちょうどいいだろ」
「……何よそれ」
彼は立ち上がり、軽快に石段を下りて行った。
彼もまた森さんへと駆け寄った。
二人は二人三脚のペアであり、クラス対抗リレーのメンバーでもある。二人が集まることは自然な事だ。
二人を見ていると、何ともモヤモヤした気持ちとなる。
いつの間にか仲良くなっているし、蓮から話し掛けるクラスの女子は、私を除くと森さんぐらいだ。
「もしかして、森さんみたいな健康的な肌が好みなのか……?」
憂鬱な心情が私を疑心暗鬼にさせてくる。
皮肉めいた私の待機状態もここまでのようだ。二人三脚の相方がバックレる事なく、グラウンドに姿を見せたのだ。
私は気だるく立ち上がり、尻についた砂を手で払って石段を下りたのだ。
※間違って完結にしてしまいました。
小説家になろうと、アルファポリスで連載中です。