先輩、恋愛NGです!
第一章-理想と現実-
-結衣side
大きなドームでたくさんのファンに囲まれて笑っている私。
四方八方から湧き上がる歓声にこたえている。
今から盛り上がる、そんな時忌々しい音に引っ張られた。
「…夢かぁ」
朦朧とした意識だが、ここが自分の部屋だということぐらいはわかった。
そして、今のが夢だったことも。
いまだなり続けるアラーム音を少し乱暴に止めて布団から出る。
カーテンを開けると清々しい青空。
小暮結衣、この春高校二年生になった駆け出しアイドルです。
制服に身を包み、おいしそうな香りにつられるようにリビングの扉を開ける。
「おはよう、結衣」
「おはよう、お母さん」
お母さんに挨拶をすませて椅子に座る。
目の前にはおいしそうな三段重ねのパンケーキ。
メープルシロップがキラキラと輝いていた。
「温かいうちに食べてね」
「いただきます!」
今はお母さんと二人暮らしだが、小暮家は単身赴任中のお父さんと県外に就職し、一人暮らし中の五つ年の離れた兄の四人家族だ。
ふたり向き合ってご飯を食べるのも慣れた。
横目に見える星座占い。
おとめ座がなかなかいい順位で心の中でガッツポーズ。
空になった食器を洗い、ドレッサーの鏡で最終チェック。
一年間着続けた制服も見慣れたもの。
変装用のマスクをして準備完了。
「よし。行ってきます!」
お母さんの声を背中で受けとりながら太陽の下に飛び出した。
照り付ける太陽の暑さからまだ梅雨が明けてないことを忘れそうになる。
私の通う高校は普通科、国際科、特別進学科、そして芸能科の4つのクラスに分けられている。
芸能科は他の3科と関わりが一切ない。
校舎はもちろん、文化祭などのイベントも別。
俳優、女優、声優、アイドル、モデル_様々な分野で活動する高校生が集まっている。
そんな芸能科への入学条件はただ一つ。
“所属事務所があること”
たとえ所属タレントが自分ひとりであろうと、ちゃんとした芸能事務所ならばOKなのだ。
なのでクラスの中には超有名タレントもいれば、名も知れていない子までいる。
「まだ有名な事務所の私はいいほうなのかも。」
卵でもはいれるからいいじゃん、そう思うかもしれないが、本気でトップを目指している子たちにとっては苦痛な場所。
すでに安定している同世代がいる中、自分は何も仕事がない、そう直に痛感させられる。
なかなかトリッキーな場所なのだ。
そんな場所での私の立場はというと、ごくごく普通。
有名、というわけでもないが駆け出しにしてはまぁまぁ売れている方。
仕事がないわけでもないが、多いわけでもない。
おかげでぐっすり8時間睡眠をとれている。
「おはようございます!」
ビルいついているテレビ、街頭ビジョンから聞こえた声。
仕事に向かっていたOLさん、登校中の女子高生、お母さんと手を繋いでいる幼稚園児。
先ほどまで急いでいたサラリーマンでさえ、足を遅め上を見上げた。
その声の主は“栗栖涼太”、超人気アイドルだ。
そして私の所属する“White Cherry”の所属アイドルであり、私の先輩だ。
一つしか違わないのに、いるだけでこんなに大勢の人を笑顔にできる先輩のことを尊敬し、あこがれている。
いつか私も…そう目標を掲げ毎日一生懸命になれる。
テレビの左上に表示された時間を見て、思わず息を止めた。
登校完了時間まであと5分を切ったところだった。
人の波をかき分けて走り出した。
「やばい、遅刻する…っ」
大きなドームでたくさんのファンに囲まれて笑っている私。
四方八方から湧き上がる歓声にこたえている。
今から盛り上がる、そんな時忌々しい音に引っ張られた。
「…夢かぁ」
朦朧とした意識だが、ここが自分の部屋だということぐらいはわかった。
そして、今のが夢だったことも。
いまだなり続けるアラーム音を少し乱暴に止めて布団から出る。
カーテンを開けると清々しい青空。
小暮結衣、この春高校二年生になった駆け出しアイドルです。
制服に身を包み、おいしそうな香りにつられるようにリビングの扉を開ける。
「おはよう、結衣」
「おはよう、お母さん」
お母さんに挨拶をすませて椅子に座る。
目の前にはおいしそうな三段重ねのパンケーキ。
メープルシロップがキラキラと輝いていた。
「温かいうちに食べてね」
「いただきます!」
今はお母さんと二人暮らしだが、小暮家は単身赴任中のお父さんと県外に就職し、一人暮らし中の五つ年の離れた兄の四人家族だ。
ふたり向き合ってご飯を食べるのも慣れた。
横目に見える星座占い。
おとめ座がなかなかいい順位で心の中でガッツポーズ。
空になった食器を洗い、ドレッサーの鏡で最終チェック。
一年間着続けた制服も見慣れたもの。
変装用のマスクをして準備完了。
「よし。行ってきます!」
お母さんの声を背中で受けとりながら太陽の下に飛び出した。
照り付ける太陽の暑さからまだ梅雨が明けてないことを忘れそうになる。
私の通う高校は普通科、国際科、特別進学科、そして芸能科の4つのクラスに分けられている。
芸能科は他の3科と関わりが一切ない。
校舎はもちろん、文化祭などのイベントも別。
俳優、女優、声優、アイドル、モデル_様々な分野で活動する高校生が集まっている。
そんな芸能科への入学条件はただ一つ。
“所属事務所があること”
たとえ所属タレントが自分ひとりであろうと、ちゃんとした芸能事務所ならばOKなのだ。
なのでクラスの中には超有名タレントもいれば、名も知れていない子までいる。
「まだ有名な事務所の私はいいほうなのかも。」
卵でもはいれるからいいじゃん、そう思うかもしれないが、本気でトップを目指している子たちにとっては苦痛な場所。
すでに安定している同世代がいる中、自分は何も仕事がない、そう直に痛感させられる。
なかなかトリッキーな場所なのだ。
そんな場所での私の立場はというと、ごくごく普通。
有名、というわけでもないが駆け出しにしてはまぁまぁ売れている方。
仕事がないわけでもないが、多いわけでもない。
おかげでぐっすり8時間睡眠をとれている。
「おはようございます!」
ビルいついているテレビ、街頭ビジョンから聞こえた声。
仕事に向かっていたOLさん、登校中の女子高生、お母さんと手を繋いでいる幼稚園児。
先ほどまで急いでいたサラリーマンでさえ、足を遅め上を見上げた。
その声の主は“栗栖涼太”、超人気アイドルだ。
そして私の所属する“White Cherry”の所属アイドルであり、私の先輩だ。
一つしか違わないのに、いるだけでこんなに大勢の人を笑顔にできる先輩のことを尊敬し、あこがれている。
いつか私も…そう目標を掲げ毎日一生懸命になれる。
テレビの左上に表示された時間を見て、思わず息を止めた。
登校完了時間まであと5分を切ったところだった。
人の波をかき分けて走り出した。
「やばい、遅刻する…っ」
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