少女漫画的事柄
「…誰?」
「それを聞いているんじゃん!まったく、すぐに答えを聞いちゃダメだよ?そんなんじゃ芸人になれないよ!」
「この先の人生で芸人になる予定は一切ないから平気だよ」
「相変わらずクールなツッコミ!これは売れる予感!」
「ならないから!…で、誰なの?」
調子よく笑った葵はふふふ、と悪事を企む悪者のごとく含んだ笑いをし始めわざとらしく肩を揺らした。
「なんと、あの、神楽坂玲人くんでしたーー!!」
「…え゛っ」
神楽坂礼人。この学園で知る人ぞ知る超有名な人気者。
子役時代劇団に所属し、今は現役のモデル。ルックスはさることながら誰にでも優しく平等に接することから絶大な人気を誇る彼は当然モテる。
そんな光の存在の神楽坂礼人が陰でひっそりと生きる私と隣の席だと言うのだから衝撃を隠せない。
ひきつった顔で固まる私をよそに葵はにやにやしながら私の体を肘でつつく。
「羨ましいなぁ、あの神楽坂くんと隣の席だなんて。運命の恋、始まっちゃうかもよ~?」
「…いや、ないないないないない」
「否定しすぎじゃん?てか、その顔。どう見ても学園のアイドルと隣の席になった女子の反応じゃないよね?高校二年生、青春満喫中のJKなんだよ?自覚しようよ」
そんなこと言ったって…。
青春を満喫するJKである前に私は俗にいう陰キャだ。
教室の隅で数少ない女友達だちと談笑しているのが性に合う。
それに、私は。
神楽坂玲人がなんとなく苦手なのだ。