異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「親のすねをかじって生きてたからな、当然っちゃ当然だが……なんか、余計に自分がどうしようもなく無能に思えたんだよ。同期はもう航海士として活躍してるってのに、情けなくて……」

「自分で自分に限界を作るな」


力なく弱音をこぼしたロズベルトさんに、バルドは厳しいひと言を浴びせた。

バルドは黙り込んだロズベルトさんの前の椅子に腰かけて腕を組むと、静かに口を開く。


「俺は……念願の騎士になったが、戦での負傷が原因で右目がほとんど見えん。お前とは違って、したくても騎士を続けられない。年齢がなんだ、身体が健康ならばなんでもできる。お前は恵まれている。ご両親もお前が三年も航海士の夢を追っている間、養ってくれていたのだろう?」


バルドの言葉には説得力が、まっすぐに見据えてくるカーネリアンの瞳からは考えさせられるものがあった。

ロズベルトさんは息を呑み、一拍おいてから「はい」と答える。


「なら、お前が航海士になると信じてくれている者のためにも、ロズベルト。諦めることだけはしてはならない。みっともなくてもいい、何度破れようがしがみつくことはやめるな」

「バルドさん……」


自暴自棄になっていたときの曇っていたロズベルトさんの目には、わずかに光が宿っている。


「誰もが順調に物事を進められるわけではない。他人と比べる必要はない。努力している人間をバカにするやつらの言葉に耳を傾ける必要もない」

「……っ、はい。俺……もう少しだけ、頑張ってみようかな」


息を詰まらせて涙交じりにそう言ったロズベルトさんは、話を終えると何度も頭を下げながら去っていく。

その背を見送ると、私は思わずバルドの横顔を見上げて軍服の裾を軽く引っ張った。


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