異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「バルドの言葉、私の胸にも響いたよ」
お母さんがいないと私の夢は一生叶わないって思っていたけれど、それはバルドの言うように自分で自分の限界を作ってしまっているのかもしれない。
お母さんがいなくても、私は今こうしてランチワゴンで弁当屋を開いている。
食べた人を笑顔にするお母さんのニコニコ弁当をたくさんの人に届けられている。
私は自分の手のひらをバルドに見せて、にっこりと笑って見せる。
「この手が動かなくなって料理が作れなくなるまでは……ひとりでも多く、私のお弁当で誰かを笑顔にする」
「雪……」
バルドはかすかに目を見張って、「手が動かなくなるまでは、か……」と私の言葉を復唱すると自分の瞼から頬にかけてある傷に指で触れた。
その横顔は心の中の自分自身と向き合っているようにも見えて、私は声をかけることができなかった。
カイエンスに来てから、早くも一週間。
バルドの説得が心を動かしたのか、ロズベルトさんはニコニコ弁当屋に毎日通ってきて、外のテーブル席で勉強をするようになった。
私は分厚い参考書にかじりついているロズベルトさんのテーブルに、コーヒーの入ったカップを置く。
「ロズベルトさん、試験はいつなんですか?」
「ああ、ありがとう。実は一週間後なんだ。三年勉強してたとはいえ、海の法律もころころ変わるから、結構やばくてね」
そうは言いながらも参考書に向かうロズベルトさんの目は生き生きしているような気がして、私はふふっと笑う。
お母さんがいないと私の夢は一生叶わないって思っていたけれど、それはバルドの言うように自分で自分の限界を作ってしまっているのかもしれない。
お母さんがいなくても、私は今こうしてランチワゴンで弁当屋を開いている。
食べた人を笑顔にするお母さんのニコニコ弁当をたくさんの人に届けられている。
私は自分の手のひらをバルドに見せて、にっこりと笑って見せる。
「この手が動かなくなって料理が作れなくなるまでは……ひとりでも多く、私のお弁当で誰かを笑顔にする」
「雪……」
バルドはかすかに目を見張って、「手が動かなくなるまでは、か……」と私の言葉を復唱すると自分の瞼から頬にかけてある傷に指で触れた。
その横顔は心の中の自分自身と向き合っているようにも見えて、私は声をかけることができなかった。
カイエンスに来てから、早くも一週間。
バルドの説得が心を動かしたのか、ロズベルトさんはニコニコ弁当屋に毎日通ってきて、外のテーブル席で勉強をするようになった。
私は分厚い参考書にかじりついているロズベルトさんのテーブルに、コーヒーの入ったカップを置く。
「ロズベルトさん、試験はいつなんですか?」
「ああ、ありがとう。実は一週間後なんだ。三年勉強してたとはいえ、海の法律もころころ変わるから、結構やばくてね」
そうは言いながらも参考書に向かうロズベルトさんの目は生き生きしているような気がして、私はふふっと笑う。