異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「やばいって言いながら、私にはロズベルトさんがすごく楽しそうに勉強をしているように見えます」
「楽しそう……か」
カップの中で揺れるコーヒーをじっと見つめながら、ロズベルトさんは唇を緩める。
「俺、小さいときに果てがない海を旅したくて、それが叶えられる仕事はないかって探してたときに航海士を見つけたんだよ」
「まさに理想の職業だったんですね」
「そうなんだよ。それから港に通って、甲板に立って船の指揮を執る航海士を見たら、ますますかっこいいなって憧れた。でもさ、全然夢には届かなくて、現実はただの飲んだくれだよ」
物憂げな顔で語るロズベルトさんの佇まいは、どこか影が差している気がした。
胸が締めつけられた私はその表情から目を逸らせないまま、ロズベルトさんの話に耳を傾ける。
「何度も試験を受けてるうちに、自分には向いてないんじゃないか。いい歳だし、そろそろ安定した職についたほうがいいんじゃないか。そんな考えばっかり頭の中に浮かんで、逆に夢が重荷になってた」
「ロズベルトさん……」
「気づいたら港で航海士を見るのも、海を見るのも嫌になってたな。でも、あんたらのおかげで久しぶりに航海士になった自分を想像して胸が熱くなったんだ」
砂糖もミルクも入れずにブラックのままコーヒーを啜ったロズベルトさんは酸っぱそうな顔をして「頭がすっきりする苦さだな」とひと言。
追い詰められているのには変わりないのだろうけれど、その時間すら今は楽しいと思えているらしい。
夢に向かってもう一度、走り出したロズベルトさんを応援したい。
そうだ、デザートでも作ってあげよう。
私は勉強を始めたロズベルトさんからそっと離れて、ランチワゴンに戻ると冷蔵庫を開けてカイエンスではサラダとして食べられている海藻のテングサを取り出す。
オリヴィエが港に買いつけに行った際に購入してきてくれたものなのだが、私はそれを一週間天日干しで乾燥させておいた。
もとは赤色だったのだが、しっかり色が抜けていて白くなったテングサの汚れを払い、鍋で一時間ほど煮込むと布でこす。
それに砂糖を加えてよく混ぜると、エドガーに作ってもらった五百円玉くらいの丸い窪みがいくつもある型に流し込んだ。
「楽しそう……か」
カップの中で揺れるコーヒーをじっと見つめながら、ロズベルトさんは唇を緩める。
「俺、小さいときに果てがない海を旅したくて、それが叶えられる仕事はないかって探してたときに航海士を見つけたんだよ」
「まさに理想の職業だったんですね」
「そうなんだよ。それから港に通って、甲板に立って船の指揮を執る航海士を見たら、ますますかっこいいなって憧れた。でもさ、全然夢には届かなくて、現実はただの飲んだくれだよ」
物憂げな顔で語るロズベルトさんの佇まいは、どこか影が差している気がした。
胸が締めつけられた私はその表情から目を逸らせないまま、ロズベルトさんの話に耳を傾ける。
「何度も試験を受けてるうちに、自分には向いてないんじゃないか。いい歳だし、そろそろ安定した職についたほうがいいんじゃないか。そんな考えばっかり頭の中に浮かんで、逆に夢が重荷になってた」
「ロズベルトさん……」
「気づいたら港で航海士を見るのも、海を見るのも嫌になってたな。でも、あんたらのおかげで久しぶりに航海士になった自分を想像して胸が熱くなったんだ」
砂糖もミルクも入れずにブラックのままコーヒーを啜ったロズベルトさんは酸っぱそうな顔をして「頭がすっきりする苦さだな」とひと言。
追い詰められているのには変わりないのだろうけれど、その時間すら今は楽しいと思えているらしい。
夢に向かってもう一度、走り出したロズベルトさんを応援したい。
そうだ、デザートでも作ってあげよう。
私は勉強を始めたロズベルトさんからそっと離れて、ランチワゴンに戻ると冷蔵庫を開けてカイエンスではサラダとして食べられている海藻のテングサを取り出す。
オリヴィエが港に買いつけに行った際に購入してきてくれたものなのだが、私はそれを一週間天日干しで乾燥させておいた。
もとは赤色だったのだが、しっかり色が抜けていて白くなったテングサの汚れを払い、鍋で一時間ほど煮込むと布でこす。
それに砂糖を加えてよく混ぜると、エドガーに作ってもらった五百円玉くらいの丸い窪みがいくつもある型に流し込んだ。