異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「で、これは出世の意味があるブリ!」


成長とともに名前が変わることから出世魚と呼ばれるブリも、縁起がいい食べ物とされている。

私はそのブリとしいたけ、赤と黄色のパプリカ、ブロッコリーの甘酢あんかけを作って一緒にお弁当につめた。


「これで祝いメシの鯛飯弁当のできあがり! ロズベルトさんのところに行こう」


私たちはランチワゴンを走らせて、ロズベルトさんが乗る予定の貨物船が停泊している港に向かった。




港に到着すると、お弁当を手にロズベルトさんを探し回った。

すると、「おーい!」という声が聞こえて、私たちは目の前にある大型船を見る。

船の搭乗口に続くタラップの前で、ロズベルトさんが私たちに手を振っていた。

ロズベルトさんは金の肩章がついた真っ白な航海士の制服に身を包み、船の錨のマークがついた帽子を被っている。


「あの酔っ払いがここまで昇進するとはねえ。すげえじゃねえか」


ランディに肘でつつかれたロズベルトさんは頬をぽりぽりと指先でかきながら、照れ臭そうに目を伏せた。


「あんたたちには恥ずかしいとこばっか見られてるな。でも、こうして晴れて航海士になれた。家族も鼻が高いって言ってくれて、本当にあんたたちのおかげだよ」

「きっかけは誰かの言葉かもしれないが、諦めるか戦うかを選んだのはおまえ自身だ。もっと自信を持て」

「バルドさん……俺、航海士になって、また新しい夢ができたんだ。今度は船長を目指すよ。そんでいつか、あんたたちに俺の指揮する船に乗ってもらいたい」


乱反射する海に劣らないほど眩しい笑みを浮かべて、ロズベルトさんははっきりと夢を口にする。

そこで気づいた。夢は遠い場所にあるんじゃない。夢は常に変化していくから、そもそもたどり着くことがないのだ。

しいていうなら、描きたい未来への道しるべなんだろう。


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