異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「バルドさん! あんたは身体が健康なら、なんでもできるって言ってくれたよな。でも俺、バルドさんは片目が見えなくても騎士を続けられるんじゃないかって思う」
バルドはロズベルトさんの言葉の意味を図りかねているのか、難しい顔で黙り込んでいた。
そんなバルドに、ロズベルトさんはもどかしそうに言葉を重ねる。
「剣を握れない騎士がいたっていいんじゃないか? バルドさんの知識と技術が消えるわけじゃない。夢を諦めずにバルドさんの力を発揮できる場所がきっとあるはずだ」
捲し立てるようにそれだけ言ったロズベルトさんは「じゃあ、またな!」としっかりとした足取りで船に乗り込む。
空気を震わせるような汽笛が鳴り、出港する船を見送っている間、誰も口を開くことはなかった。
やがて船が地平線の彼方に消えた頃、静かにバルドは呟く。
「右目が見えなくなったら騎士を続けられないと、限界を作っていたのは俺のほうかもしれん」
ロズベルトさんの言葉は、バルドの心を動かしたのかもしれない。
右目に触れるときはいつもは苦しげなのに、今日は少しだけ笑みを浮かべながら傷に指を這わせていく。
「かっこいい男だな、ロズベルトは……。俺のほうが学ばされた気分だ」
これからどんなふうに生きていきたいかなんて、本人にしか答えは出せない。
悩んでいるバルドにできることといえば、なにも言わずに寄り添うことだ。
そう思った私は、ただ静かに船が旅立った海へと視線を向けるのだった。
バルドはロズベルトさんの言葉の意味を図りかねているのか、難しい顔で黙り込んでいた。
そんなバルドに、ロズベルトさんはもどかしそうに言葉を重ねる。
「剣を握れない騎士がいたっていいんじゃないか? バルドさんの知識と技術が消えるわけじゃない。夢を諦めずにバルドさんの力を発揮できる場所がきっとあるはずだ」
捲し立てるようにそれだけ言ったロズベルトさんは「じゃあ、またな!」としっかりとした足取りで船に乗り込む。
空気を震わせるような汽笛が鳴り、出港する船を見送っている間、誰も口を開くことはなかった。
やがて船が地平線の彼方に消えた頃、静かにバルドは呟く。
「右目が見えなくなったら騎士を続けられないと、限界を作っていたのは俺のほうかもしれん」
ロズベルトさんの言葉は、バルドの心を動かしたのかもしれない。
右目に触れるときはいつもは苦しげなのに、今日は少しだけ笑みを浮かべながら傷に指を這わせていく。
「かっこいい男だな、ロズベルトは……。俺のほうが学ばされた気分だ」
これからどんなふうに生きていきたいかなんて、本人にしか答えは出せない。
悩んでいるバルドにできることといえば、なにも言わずに寄り添うことだ。
そう思った私は、ただ静かに船が旅立った海へと視線を向けるのだった。