異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「雪? どうしたの?」


私は周囲を見渡して誰もいないことを確認すると、なんだか気持ち悪いのでいそいそと上がる準備をしながら答える。


「ご、ごめん。気のせいだったみたい! もう上が──」


上がるね、と言いかけたとき、茂みから「やっと見つけたーっ」という叫びとともに人影が飛び出してきた。

それがなにか把握する前に、バシャンッと大きな物体が私のいる泉に落ちてくる。

大きな水しぶきが静まり、ぶくぶくと泡を立てながら浮き上がってくる影を見つめていると──。


「ぷはーっ、まさか泉に落ちるとは、びっくりしました」


水面から顔を出した人影──男は、にこやかな笑みを浮かべて軽く手を上げる。

彼はローブの下に白のブラウスと茶色のズボンを身につけ、黒のブーツを履いていた。

いや、この際服装なんてどうでもいい。

今重要なのは、見知らぬ男と裸で対面しているということだ。

私は深呼吸をしてから、ありったけの空気を吸い込んで叫ぶ。


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