異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「この落とし前、どうつけるつもりだ」


ただでさえ強面なのに、バルドさんの顔はそこら辺のならず者よりおっかない。

ただ、肩に可愛らしいウサギのロキを載せているせいか、そのギャップがなお怖い。


「うちのお嬢の裸を見といて、生きて帰れるとは思ってねえだろうなあ?」


記憶どころか、存在自体を抹消する勢いでランディは両手の拳をコキコキと鳴らした。


「こういうのは行政の力を借りるべきです。まず、そこのゲスを法務省に突き出しましょう。法で裁いていただいて、慰謝料をふんだくらなくては。彼女が受けた恥辱を思えば、謝罪などでは到底償いきれません」


淡々と社会から追放しようとしているオリヴィエの報復がいちばん恐ろしいかもしれない。

皆の視線を一身に集めた男は涙目で、「本当に違うんです! 命だけは助けてください~っ」と情けない声で命乞いをしていた。

さすがにかわいそうになってきて、私はエドガーの白衣を胸の前に手繰り寄せながら尋ねる。


「じゃあ、あなたはどうして私たちを探してたんですか?」

「なんでも、ニコニコ弁当屋の料理人が作った弁当を食べれば、国を救えるほどの英気を養えるのだとか!」


国を救えるって、たぶんパンターニュ王国でバルドたちにお弁当を振る舞ったときのことを言ってるんだろうけど、そんな大げさな……。


「カイエンスの町の人の話で、あなた方がここら辺にいるだろうことは予想できました。来てみたら大当たりでしたよ」


人差し指を立てながら得意げに話す彼に、オリヴィエは目を細めてますます疑わしそうな顔をする。


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