異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~

「そこまでして、ニコニコ弁当屋を追い回わす理由はなんです? お弁当が食べたいだけ、なんて嘘が通用するとは思わないでくださいね」

「それはですね、是非、領主様が力を貸してほしいと申しておりまして」


どこかの領主様にまで噂が広がっているなんて思いもよらなかった私は、戸惑いながらも「力を貸して欲しいっていうのは?」と聞き返した。


「実は私の主である領主──モナド様は雪崩に領地であるロドンの町が巻き込まれてしまい、大変心を痛めております。被災した町民たちをなんとか励ましたいと、ニコニコ弁当屋の力を借りたいとのことです」

「お前は主の命で、俺たちを連れて帰らなければならないわけか」


バルドの言葉に、肯定するように男は頷く。


「はい、三ヶ月も探し回りました。どうか、フェルネマータ王国に来ていただけないでしょうか?」

「フェルネマータって確か……」


その国名に聞き覚えがあった私は、エドガーを見上げる。

すると、固く唇を引き結んで表情を曇らせていたエドガーが私の視線に気づき、すぐに笑みを取り繕った。


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