異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「いいえ、親交のある領主から無理を承知で頼み込み、食料を分けていただきました。城には町の復興支援に関する嘆願書を送りましたが、被災してから一カ月経った今も音沙汰ありません」

「他国のことをとやかく言いたくはないが、王族の怠慢が見られるようだな」


バルドの厳しい意見にエドガーが「本当に許されることじゃないよね」と心苦しそうに呟いた。

明らかに沈んだ表情をしたエドガーに私は居ても立っても居られなくて、その腕に手を伸ばすと服を軽く引っ張る。


「とにかく、被災者のいる教会に行こう!」

「雪……そうだね。今はできることをしないと」


エドガーの目に強い意志が見えたことにほっとしつつ、私たちはさっそく避難所になっているという教会に向かった。




教会の敷地内にランチワゴンを停めると、私たちは礼拝堂の中に入る。

足を踏み入れてして感じたのは肩にのしかかるような絶望と悲しみ。

ロドンの町の人たちは薄い毛布一枚に包まって、被災者同士で身を寄せ合いながら寒さをしのいでいた。

教会に入ってきた私たちに気づいた被災者たちは「誰だ……?」「俺たちを助けに来てくれたのか?」「どうせ、避難してきたんだろう」と各々反応する。


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