異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「伸ばした生地は三つ折りにして、十分間冷蔵庫に入れる。これを五回繰り返すと生地が出来上がるよ」


こうして生地が完成すると私は薄切りにした玉ねぎとしめじとほうれん草を炒めて、具材に火が入ってきたら小麦粉を投入して馴染ませる。

それから牛乳とコンソメ、塩を少しふりかけてホワイトソースを作った。

私はグラタン皿に切り目の入っていない生地を敷き、玉ねぎとしめじ、ほうれん草がたっぷり入ったホワイトソースをかける。

その上からサーモン、チーズの順に重ねて最後に生地で蓋をしたところで、ランディが「雪」と名前を呼んできた。


「オーブン、温めておいたぜ」

「ありがとう! ちょっと待ってね。生地をお魚の形にカットして、真ん中に乗せるから」


皆が心から笑えますように。

お母さん、どうか笑顔の魔法をかけて──。


そんな願いを込めながら、私は焼く前のサーモンパイの上に生地で作ったお魚を載せていく。


「僕にもやらせてください。手先は器用なほうですから」


私の手元を見ていたオリヴィエは、そう言って手伝ってくれた。

バルドとエドガーは魚の生地が乗ったサーモンパイの周りにブラックオリーブを飾り付けて、ランディが二百度のオーブンで十五分ほどパイを焼いていく。

こうして、出来上がったサーモンパイを大きなトレイに載せた私たちは教会の中に戻った。

湯気が立つサーモンパイを見たロドンの町民たちは「なんだ?」「おいしそうね」と興味津々に近づいてくる。


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