異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
昼の炊き出しを終えて、片付けを済ませたあとに私たちはランチワゴンに集まっていた。
「復興の目処が立ってないとなると、僕たちは永久にロドンの町に留まって炊き出しをすることになりますよ。終わりが見えません」
オリヴィエの言葉は厳しいように聞こえるが、いちばん現実を捉えていた。
それをランディも「正論だな」と肯定して、両手を後頭部に当てると椅子の背もたれに寄りかかりながら天井を仰ぐ。
「次の物資が来るまで領主様の邸の食材を使って欲しいって言ってたけどよ、こんなにたくさん被災者がいるんだ。すぐに底を尽いちまう」
「モナド卿から城に働きかけているとは言っていたが、どうも動く気配がない。いずれ民からの暴動が起こる可能性も否めん」
正義感の強いバルドの言葉の端々には苛立ちが見え隠れしていて、眉間にも深い皺が刻まれている。
重苦しい沈黙が流れる中、ずっと口を閉ざしていたエドガーが静かに息を吐き出して皆の顔を見回す。
「方法はひとつしかない。城の食料庫なら大量に食材が保管されているはずだから、国王に直訴するんだ」
「でも、国王様はモナド様が嘆願書を出しても動こうとしなかったんでしょう? 直訴したところで、受け入れてくれるのかな。というか、そもそも会えないんじゃ……」
一般市民の私たちが簡単に国王に会えるとは思えない。
門前払いがいいところだと思っていると、エドガーは「俺に任せて」と言って立ち上がる。
なにをする気なのかはわからないけれど、旅でたくさん私たちを助けてくれた彼がそこまで言うのだ。
きっといい策があるに違いないと、私たちはさっそくエドガーの運転で城へ向かった。
金装飾がふんだんにあしらわれた塔がいくつも建ち並ぶお城にやってきた。
屋根は雪が積もらないように金のオニオンドームになっており、ろうそくのような形をしているのは祈りが神様に届くようにという意味があるのだとエドガーが教えてくれた。