異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「家出王子が偉そうなことを言うな。お前は縁談が嫌で城を抜け出し、国から逃亡したのではないか。今思えば、子供の頃からお前は出来損ないだった。帝王学よりも雪害に苦しむ民のための発明がしたいなどと、からくりばかり弄っていただろう」


国王はふんっと鼻で笑い、蔑むように自分の息子であるエドガーを見る。


「あのままここにいれば、俺はベルテン帝国に婿入りしなければならなかったんです。発明が続けられないと思ってこの城を出ましたが、民を思えば罪悪感が拭えません。あなた方は私利私欲でしか動かない。その結果、ロドンの町の人たちが苦しんでいる」


静かな怒りを含ませたエドガーの声は、いつもより低い。

話をじっと聞いていた臣下たちは切なげに目を伏せており、それに気づいたエドガーは家族である王族たちに向けて語気を強める。


「なにかしたいと思っていても、国王が動かなければ臣下たちは民に手を差し伸べることすらできません。俺も……こうして庶民になって初めて、誰かのために自分の力を使うことができた。王族だったときには叶わなかったことです」


そこまでエドガーが言い募っても、国王は面倒くさそうにはあっと盛大なため息をつき、腕を組むとこちらを高圧的に見下ろしてくる。


「お前は私になにをさせたいのだ」

「城の食料をロドンの町の人たちに渡してください」

「それでは我々が食べる分がなくなるではないか。却下だ」

「この城には有り余るほど食料があるでしょう。ロドンの教会にいる被災者たちに配ったところで、すぐに底を突くことはありません。ですが、被災者たちは明日の食料すらあるかどうかわからない状況です。英断なさってください」


引き下がる様子のないエドガーに国王はぐっと黙り込んだが、すぐに「まあいいだろう」と意見を変えた。


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