異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「エドガー、あなたを誇らしく思うわ。できることなら、この国に留まって王子として国政に携わってほしいと思うけれど……」


王妃様は私に視線を移して「あなたと取引をしてしまったから」と残念そうに笑う。


あのときは国王と王妃様がエドガーの意思に反して、この城に閉じ込めて利用しようとしたから取引を持ちかけたのだ。

だから今回のことでエドガーの心が動いて城で王子として生きたいと言うならば、私には止められない。

私はどんな答えを出すのか確認するために、彼の前に立って尋ねる。


「エドガーはもう自由だよ。私はエドガーを縛る気はないし、エドガーの望むように生きてほしいって思ってる。だから、決めるのはエドガーだよ」

「……うん、そう言ってくれて嬉しい。だけど……できれば、俺が必要だって言って。手放さないでほしい」


その言葉の意味を図りかねて「え?」と聞き返すと、エドガーが私の手をすくうように持ち上げた。


「雪のそばにいて、雪の夢を叶えたい。そのために役に立つって約束するから、どこまでも連れて行って。それに……雪といて初めて、俺の発明は生きるんじゃないかと思うんだ」

「……エドガーの気持ちはわかった」


私は彼がくれた思いをすべて心に留めるように瞼を閉じ、やがて静かに目を開けて告げる。


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