異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「その旅、僕も参加したいのですが」
「え、オリヴィエが!? でも、リックベル商店はいいの?」
まさか、彼が参加を申し出てくるとは思っていなかった。私が驚きながらも尋ねると、オリヴィエは愚問だと言いたげな顔をする。
「ええ、従業員は余るほどいますし、問題ありませんよ。それに私は自分の中にある飢えを満たしたいんです。それは店を出して繁盛させるの繰り返しでしかない日常では、満たされません。でも、あなたのそばでなら刺激も得られそうです」
「私もね、この旅が悲しくて辛いだけの毎日を変えてくれるって信じてるの。だからきっと、オリヴィエにとって刺激的な時間になると思う!」
「折り紙付きですか。でしたら責任を持って、僕を楽しませてくださいね。その代わりと言ってはなんですが、これは僕からの祝いの品です」
身を翻して幌馬車に近づいていくオリヴィエは、顎をしゃくって私たちにそばに寄るよう促してくる。
私はエドガーやバルドさんと顔を見合わせると、幌馬車の中を覗く。
そこには種類が豊富な食材たちが大量に積まれていた。
「ええっ、こんなにたくさん……オリヴィエ、いいの!?」
私は興奮してオリヴィエの両腕を掴み、揺する。
オリヴィエは呆れ顔でやんわりと私の手を振り解くと、ベストの裾を軽く引っ張って身なりを整えた。
それからコホンッと咳払いをして、そっぽを向いてしまう。